コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 初恋?何それおいしいの? ( No.37 )
- 日時: 2015/07/31 14:10
- 名前: まかろん (ID: syFyy808)
「うーん、やっぱり無いなぁ紐…。」
体中のポケットというポケットを探し回ったらしい。校長…はため息をついた。
「はっそうだ、尻ポケットに入れてたから痛くて外しちゃったんだよ!」
ぐっと拳を握りご自分で納得している様子。 …首にかけろよ…とはあえてつっこまないでおこう。
「そういえば、君こんなところでどうしたんだい?」
芝生に散らかした飴やらキャラメルやらを拾いながら聞いてきた。
「え、あ〜えっと…ひなたぼっこ…?」
だいぶ無理な言い訳な気がするが、この校長にはばれないであろう、というかばれないでほしい。
苦笑いをして油断している俺に、何故か腹を攻撃された。
「いっだっ!ちょ、何すんだ!」
治りかけの腹にまたダメージが…。も、本当に勘弁してほしい。
「やっぱり。君もやられたんだねぇ。」
「君も…?」
「僕もかみさんにはよく殴られてね〜。いやぁ大変だよね〜。」
腕を組んで頷かれる。なんとなくこの人の家庭内図が見えた気がした。
「そうですね、女は怖いですよね…。」
いろんな意味で。 まさかこんな所で分かりあえる人物に出会えるとは。
「君も気をつけなきゃだめだよ?女心っていうのは一生わからないけど…。 わかろうとすることは大事だよ。」
な、なんだこの神々しさは。相当殴られてる…。もはやプロだ。
「すいません校長。今まで少し馬鹿にしてました。」
深々と頭を下げる。やばい。この方は尊敬すべきお方だ。
「うーん、君は正直だねぇ。良いと思うよ?そういうの。」
くしゃっと笑う校長は、貫禄があるように見えてきてしまった。
「そうだ。君の名前はなんていうんだい?」
「ああ。俺は霧島隼っていいます。一年です。」
「はやと君かあ。よろしくねぇ。」
俺の手より一回り大きい手と握手する。妙な友情ができた。
「うふふ 生徒とこんなに話したのは久しぶりだなあ。」
「そうなんですか。」
あまり毛嫌いされる性格ではないと思うのだが、何かあったのだろうか。
「うん。生徒に近づくとみんな逃げるんだよ。さみしい。」
あからさまに落ち込んでしまった。
「あ、あの、俺で良ければまたここにきますよ?」
少しいたたまれなくなり、口走ってしまった。…妙なフラグが立った気がする。
「本当かい?!」
凄い勢いで両手をつかまれる。…子供に新しいおもちゃを与えてしまったようだ…。
「は、はい。」
「ありがとう!僕は大体ここにいるから、いつでも遊びに来てね!」
「はい。」
一瞬自分の発言に後悔しそうになったが、この方は悪い人ではなさそう。
もう昼休みも終わりそうだから教室に戻ることにした。
だが、校長の姿が見えなくなった瞬間、嫌な雰囲気が漂う。
良い予感がせず、急いで校長の私有地に戻ると、
そこには先程の温厚なおじいちゃんには見えない、まがまがしいオーラを放っている後ろ姿があった。
「校長…?」
話しかけても返事はない。一体何をしているのか、
よく校長の手元を見てみた。 すると、
両手に軍手をし、右手には鋏を持って、うねうねとした、決して可愛らしいとは言えない植物の手入れをしていた。
よく聞いてみると、
『うふふ今日も可愛いねぇ。大丈夫今きれいにしてあげるからね。』
などと独り言を言っている。
とても、とても見てはいけないものを見てしまった。
俺はその場から逃げだすように教室へ戻った。