コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 初恋?何それおいしいの? ( No.49 )
- 日時: 2015/08/25 11:05
- 名前: まかろん (ID: syFyy808)
ー拝啓お母様
私は今重大な危機に直面しております。
それは、『美術部入部テスト』 たかがそんなこと。そう思いますか?
あなたならご存知のはずです。私に筆というものを握らせたらどうなるか…。
そう。テストとは、『赤リンゴを描く』ことです。
てっきり面接的なものかと思いましたよ。ここ、第3美術室に来るまでに精一杯抱負を考えました。
見事私の努力は水の泡となりました。
今、真っ白な画用紙を前に、鉛筆を握りしめているところです。
シャーペンを折るのは少し難しそうですが、HBの鉛筆ならば簡単に、
おっと さすがに隣の方に不審に思われてしまいました。
ー鳴々こうしていると無邪気だったあの頃を思い出します。
自由帳にたくさん家族の絵を描いて、1枚描くごとにお母様に見せていました。
あのとき、お母様はなんと仰っいましたっけ…。 ああそうです。
『これは何の植物?』
いつもの優しい笑顔で仰ってくださいました。
これが走馬灯というものでしょうか。そうか。私はもうすぐお迎えがくるのですね。
後悔は多少残りますが…。いえ。早く迎えに来てくださいお母様。今すぐにでも。
なう! なう!! じゃすとなう!!!
もういっそのこと殺してくれ!!
鉛筆の先を天に向け、必死に懇願する私は周りから見たら随分と奇妙だろう。
さあ 早くこの変人をつまみ出してくれ。
「ど、どうしたの?大丈夫?」
いや、頭が大丈夫ではないです…。
はっ いかん彼女がいる目の前で何をしているのだ。
ーそう。私を第3美術室という戦場まで連れてきてくださった彼女…
そういえば、まだ名前を知らない。
考えてみると、名前どころかクラスも何も知らない。
知っているのは声と容姿だけ…。
机を挟んで向かい側にいる彼女と目が合い、思わず逸らしてしまったが、何も言わず、唯微笑んでくれた。
そうだ。もしもこのリンゴが描けたら、彼女の名前を訊こう。
ただ相手の名前を訊くことなんて、幼稚園児でもできる。
でもこうして「もしも」と考えると、彼女の名前がもっと素敵なものになるような気がして。
私は密かに決意し、鉛筆をはしらせた。
「はい!バレー部一年生集合ー!」
北竜部長の大きな声が体育館に響く。いよいよだ。
仮入部者が一斉に入口に集まり、一列に並ぶ。俺らは一番端に行ったがざっと見ても、やはり男子は俺ら2人しかいないようだ。
「うん、みんなよく来てくれた!私たちは君らの入部を歓迎するよ!」
「いやまだ入部決定してませんからね?」
「え」
「はい。」
「いいいや!みんな入りたいよね!ね?!」
「そうやって後輩に押し付けないの」
「痛い」
ポニーテールの先輩(おそらく副部長)が部長の首を絞める。きっと部長のつっこみ役なんだろうなと察した。
「はい、ごめんよ五月蝿くて。私は女子バレー部副部長、清里 茜よろしくね。
このうるs、けふん 元気なほうが部長の」
「はーい!いつも元気モリモリ北竜 奏部長だよ!みんな是非とも『奏先輩』と呼んでほしいな!よろしく!」
「…はい。それでは、仮入部中の内容なんだが…、いや先にあいつらを説明しちまうか。 おい!そこの2人!」
ん?俺たちのことか?清里先輩が手招きしている。
いつも目つきの悪いヘビくんと顔を見合わせ、先輩方のほうへ行った。
「こいつらな、いちよう『男子バレー部』なんだが、まだ人数が全然足りてなくて体育館使えないんだよ。
だからこの部長が体育館を一緒に使わせてあげようって勝手に決めてな…。
そんな訳で、今年から男子と一緒に練習することになる。 それでもいいなら仮入部に参加してくれ。」
ざわざわと女子達の中で不安の声が広がる。まあ当然だよな。 中には男ってだけで嫌がる人もいるわけで…。
「で、でも!場所を提供するだけだし!あ、だけではないかもしれないけど、女バレを優先的に練習させるし、何よりこいつら上手いらしいから!
あれ何言ってんだろう私。 と、とにかく!こいつらが君らに危害を加わえることはないと信じたい!」
「あほか。支離滅裂だあほが。」
「痛い」
今度は頭を叩かれている。…良い音したな…。
「うーん…。まあこいつらが問題を起こさないことを願いたいが、今のところメリットが『上手い』ってだけで…。」
「あ、じゃあ試合しようよ!3対3で!」
「はい?」
「こいつらがどれくらいできるか、手っ取り早く確かめられるじゃん?」
「まあ、そうだね…。でも時間がなあ…。」
「特別ルールで10点マッチとか、ジュース無しで。」
「ああそれなら良いかも。」
お?!試合ができる雰囲気になってきた。やっと打てる…!
「じゃ、女バレチームとして…綾ー!うちらに入って。それから、男バレとして…、みき!お願い。」
「えっ!私が男子のほうに入んの?!」
「よろしくみっちゃん!」
「奏まで…。」
「と、いうことで、一年生諸君は今日見学。うちらのゲームを見てもらうから。
それを見て、入部するか改めて決めてほしい。」
『はい!』
「よっしゃ!いっちょやるか女子バレー部対男子バレー部同好会の試合!」
中学初試合がいよいよ始まる…!
正直隣のヘビくんと合う気がまったくしないが、それでも…!
絶対勝ってやる。
試合という名のテスト開始5分前。