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Re: 零fighter山鷹隊 ( No.18 )
日時: 2015/07/12 09:45
名前: ワタル (ID: nPUiXc5e)

【ガンドラゴン見参!!】

血塗られた薄暗い教会。
礼拝堂だ。
その惨劇は、今のものではなく長い年月を経た過去のものであった。

ところどころであるが、
壁に掛けられたランタンには、
ロウソクの火が灯されている。

マービン『おい!君達こんな夜中に一体何をしているんだ!』

赤い服の少女達はよく見ると、耳はトガっていて透き通る様な白い肌、
その瞳は切れ長で少しツリあがってはいるが、整った端整な顔立ちだ。

心なしか大人っぽくもあり、成人しているようにも思える。

マービンの質問をよそに、何やら意味不明な言語を呟く少女、両手を不思議な形に組みながら…。

その言語はやがて耳からではなく、脳に直接語りかける。
理解は全く出来ない、何やらお経か呪文の様だ。

マービンは眠りの呪文にかけられた。

倒れ込むマービン。

幾つも陳列された椅子の隙間にもたれかかるようにして…。

A・Jとナックルもまた、マービンと同様に眠らされていた。

床に落ちた松明の火も呪文により消された…。

赤い服の少女達は、人間に似て異なる種族…エルフだ。
彼女らは、いうに300歳を越えている。
見た目は、人間の16歳位の容姿であるが…。

レイピア(細身の剣)を腰に差した魔法剣士。姉のホークアイ。
ボウガン(弓矢)と装飾の施された魔法のダガー(短刀)を装備したアーチャー。妹のイーグルアイ。※以下イーグル

ホークアイ『まさかこの村にまだ人間がいたなんて…ところでイーグル…"聖水"は汲んできた?』

イーグル『はい お姉様 こんなにいっぱい…』

そう言うと、大量の小瓶が入った皮袋を見せる。中身は全て聖水だ。

教会の表にある壊れた水飲み場から湧き出る水は"聖なる水"と称されている。

ホークアイ『うん それだけあれば充分ね…"ロザリオ"も手に入れたわ』

と、その時、礼拝堂の屋根の上から大きな鳥が歩く音が聞こえる。

イーグル『お姉様!気をつけて!』

ホークアイ『わかってるわ ハーピーのメスが一匹いるようね…』

イーグル『違うの!あの男がいるの!』

気配を感じて、振り向くホークアイ。

その背後に黒装束の男。

襟の高い黒マントを羽織り、
黒いハットを深く被っている。
手にはクロスボウを持つ。
その腕だけが肩まで露わになっている。
そこに巻き付く様に黒竜のタトゥー。


ガンドラゴンだ!!!



ホークアイの顔が引きつる。

何故なら眠りの呪文は、ガンドラゴンには効かない。
ガンドラゴンの装備する左手のリングがそれらを無効化にするからだ。

ガンドラゴン『エルフの娘よ…聖水は幾らでも持って行くがいい… だが…その"ロザリオ"だけはおいてゆけ!』

クロスボウを構え、エルフ語で話すガンドラゴン。

ホークアイは、しばらくガンドラゴンと睨みあいになるが、大人しく首にかけた"ロザリオ"を外す…。

イーグル『お姉様…』

悲しげな声でイーグルは呟いた。

すると…

屋根に何やら無数の足音が飛来してくる。

カン高い鳴き声が群れをなしてきた!

教会には窓がたくさんある。

そこから見えたものは、30匹以上のハーピーの群れだ!

教会の屋根に次々に集まる。

森の奥にある渓谷の向こうは、
死の谷と呼ばれ、その最果てには魔界と呼ばれる区域があるという。
そこには魔物が巣くう城"デス・キャッスル"が存在する。

ハーピーの群れは、死の谷からやって来たのだ!

教会の屋根はハーピーの大群に埋め尽くされた。
ヤツらが騒ぐたびに地響きのような音たて、建物がきしみ始める。

すると
一匹だけ異彩を放つ黒い大きな翼を広げた化物が、教会の中へ入り込んできた。
奥行きの長い教会の、端から端へとゆっくり飛行する。

異様な生き物の登場に、ガンドラゴンを始めエルフの姉妹も一歩も動けず、身動きもとれずにいた。

その化物は、事もあろうか

聖母マリアの像にとまりガンドラゴンを挑発する。

イーグル『…お姉様…あれは…!』

ホークアイ『モスマン!!!』

それは"死の使い魔"《モスマン》である。

その生き物が現れると災いをもたらす。
その容姿を見たものに死をもたらす。
とも言われている…。


そして

モスマンは顔を不気味に360℃回転させると、咆哮をあげる!

次の瞬間!しびれを切らしたハーピーのメスの軍団が狂った様に襲いかかる!

カン高い鳴き声を上げながら迫り来る!

あらゆる窓から入り込み、四方八方から攻めてきた!

ハーピーの狙いはガンドラゴンの様だ!

ガンドラゴンはクロスボウを展開させると、乱れ撃ち!

シュババッ!

シュババッ!

シュババッ!

3方向に同時に飛ぶ連射式クロスボウ!
※1度の装填で3発を3回、計9本撃てる。

的確に9匹仕留めるガンドラゴン!

すぐに新しい矢の入ったカートリッジを装填する。
矢は小振りだが殺傷力は高い。

時折、逆手に拳銃を持ちハーピーを仕留める余裕を見せるガンドラゴン。

その隙をついて逃げるエルフの姉妹。
ロザリオを胸にしまうホークアイ。
2人はお互い背中合わせにローリングするようにして走る。
退路を確保しつつ降りかかるハーピーのみ、駆逐する!

ホークアイは、ハーピーをレイピアと呪文で撃退。
手のひらから、火の玉の魔法を放つ。

エルフの姉妹は祭壇の下にある、隠し扉を開け地下室へと向かう。

先に入ったホークアイ。

イーグルも後に続いて身体をかがめるが、ふとガンドラゴンの方を見ると数匹のハーピーに取り押さえられて、空中に浮いているのがみえた。

ハーピーは上空まで獲物を連れて行き、いたぶるように相手を倒す。
簡単には殺さず、寄ってたかって空中で苦しめ遊ぶのだ。

イーグルは、ガンドラゴンに絡み付く4匹のハーピーのうち3匹を得意のボウガンで仕留めた!

気の優しいイーグルは、敵であるガンドラゴンが卑劣なハーピーの餌食になる様子を放って置くことができなかった。

その優しさが時として、仇とならなければ良いのだが…。


ホークアイ『イーグル!早く来なさい!何をしているの!?』
心配になり地下から顔を覗かせるホークアイ。

イーグル『はい!お姉様!今行きます!』

地下室へ降りていくと扉がある。
部屋に入り
ホークアイは、とてつもなく大きな森の絵が描かれた絵画の前に立つと、
呪文を唱えて光の精霊を召喚した。
光の精霊はエルフの姉妹にまとわりつくようにして、光のシャワーを浴びせると絵の中へとスッと入っていく…。

エルフの姉妹も絵の中へと入っていった。

絵の中に2人のエルフの姉妹が見える。

イーグル『きゃっ』
転ぶイーグル!
背中の矢筒から数本の矢が散乱する。
慌てて矢を拾い集めるイーグル。
1本だけ拾い忘れた。
2人はその事に気づいていない。

ホークアイ『何やってるの しっかりしなさい』

転んだイーグルを抱き抱えるホークアイ。
聖水の入った皮袋とロザリオを握りしめた。

ここは人間界と妖精界を繋ぐ時空の歪み、いわば入り口である。
エルフの姉妹はすぐに森の奥へと消えていった。

大きな絵画には、新しく1本の矢が不自然に描かれていた………つづく。



次回 【ガンドラゴン危機一発!】どうぞお楽しみにw