コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: つれづれなるままに、カオス(ミルクソテー風味) ( No.11 )
日時: 2015/07/09 20:58
名前: コーラマスター ◆4oV.043d76 (ID: OHW7LcLj)

しばらく歩くと、前方から一筋の光が差し込んできた。
どうやらこの先が開けたところになっているらしかった。
竹本さん(膝ガクガク)は少女の顔を見る。
さっきまであった涙の跡は、もう消えていた。

「さあ。ここが村よ」

鬱窟とした森を抜けるとそこには————。
明らかに文明を感じる、かまぼこ型の白い、巨大な建築物があった。
そう、まさに工場のような。というか工場と言う言葉以上にこれがあてはまるものがあるだろうか。
そして明らかに機械が動く、ウィーンという音が聞こえた。
あぜんとして声も出なかった。開いた口がシャットダウン不可能な状態に陥る。
自分がおかしいんだろうか。竹本さん(まだボケるには多少早い)は一瞬錯乱した。

「まさかここが村などとぬかすのではあるまいな」
何故か古めかしい口調になる。無理もない、未開のジャングルの中で急に文明産の物体、それも巨大を見てしまったのだから。
精神的ショックはかなりのものと推察される。

「さっき言ったじゃない。大丈夫? 疲れてるんじゃない」
素で心配された。こちらとしてはあなたがたのほうがよほどおかしいのですが、という声は呑み込んだ。
全く、おかしいのだ。文明レベルは無視するとしても、村、つまり集落であるはずなのに民家らしきものがない。
狩猟民族っぽいから畑が無いのは許すとしても、建物が工場以外に無いのは不自然だ。
さらに、人影が全く見当たらない。
多分工場にみんなで入っているか、広大な森の中を駆け回っているかのどちらかだろう。

工場を横目にそんな思慮を廻らしていると、少女が訝しむような目で見てくる。
「どうしたの? そんなにジロジロ見て」
「いや、あの建物なんなんだ?」
と、工場を指差す。すると少女はなんだそんなことかと笑った。

「心配しなくても、すぐにわかるわよ」


少女は、工場のドアの前に立った。電子ロックのようなものがかかっているようで、それっぽい機器がついている。
文明レベルについては、もうつっこまないことにした。
少女は右手のちくわを電子ロックの指紋認証らしきとこに押し付けた。
べちゃりと。機械壊れないのかと思った。
しかし、竹本さん(文系)の心配をよそに、ピッという機械音ともにドアが開く。
横に開くタイプかと思いきや、全く予想外の、上下に割れて格納されるタイプのドアだった。謎の技術だ。

中を見てみると、それはもう絶句するしか無かった。
外見が工場だというのに、中は確かに村だった。
アマゾンの奥地にありそうな、緑いっぱいの村。
ちょっと料理器具とちくわが多いこと、そして工場の中にあることを除けば普通のアマゾネスヴィレッジ。
しかも、明らかに外から見た工場よりも広かった。
竹本さん(営業職)はもはや放心状態だった。
すると、隣の少女が不意に声を上げた。

「おとう、じゃなかった村長ただいま。『でんせつのちくわ』見つけてきたよ」

直後竹本さん(けんかよわい)は背後に気配を感じた。