コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: つれづれなるままに、カオス(ミルクソテー風味) ( No.15 )
- 日時: 2015/07/18 10:10
- 名前: コーラマスター ◆4oV.043d76 (ID: OHW7LcLj)
少女宅は、村の中でも一際目立つ建物だった。
『茶屋』。竹本さん(伝説の傭兵よりも高齢)は、その建築物を見てそう思った。
時代劇に出てくるような、そんなお店。徳川光圀が家来とともに団子食べてそうな、そんなお店。
周りがアマゾンの奥地だというのに、ここが、ここだけが、謎の和風アトモスフィアを醸しだしていた。
唯一、茶屋でない部分を上げるとすれば、屋根に『てやんでえちくわ屋』という看板がかかっていることだろうか。
何が不満なのかしゃらくせえのかは不明だが、おそらくここはちくわ屋なのだろう。
そう書いてあるからそうなのだ。異論の存在は認めない。
竹本さん(中小企業勤め)はついに考えることを止めた。
いちいちこの場のことを理解しようとしていたら、日が暮れるどころか終末を迎えると学習したのである。
「・・・・・・家については何も言わないんだな」
少女父がため息を漏らす。何を馬鹿な。
自らを絞殺しかけた相手を愚弄するほど自分は愚かではない。
「なんかこう、疲れたので」
「そうか、良かったな。これからもっと疲れる」
少女父は引き戸を開けた。竹本さん(四十路とゼロ距離)と少女もそれに続く。
部屋の中は、予想よりもまとも——あくまで外観にふさわしいという意味だが——だった。
外が純和風だったが、内部は喫茶店のような感じで、丸い机とその周囲には金属製のイスがいくつか配置されていた。
奥のほうにはガラスケースがあり、大小色様々のちくわが陳列されていた。
相変わらずてやんでえの必要性が感じられないが、やはりここは『てやんでえちくわ屋』だったのだ。
少女父はおもむろに椅子に腰掛けると、竹本さん(ちょうど椅子が欲しかった)にも座るよう促した。
「茶を淹れて来てくれ」
少女父がそう言うと、少女は奥の戸を開けて出て行った。
少女父はそれを見届けたうえで、どこか遠くを見つめながら呟いた。
「あの子には、とても聞かせられないからな」
「さて、どこから話をしようか」
少女父は竹本さん(わりと臆病)のほうへ向き直ると、真剣な面持ちで言った。
「まず、わかっているかもしれないが、私は貴方と同じ日本人だ」
「・・・・・・・え?」
かなり予想外の情報の入力により、脳回路が一時停止する。
日本? ニホン? ジャパニーズ!?
サムラァイ!フジヤマ!カップヌ・・・・・・This is a pen!
頭の中をカップ麺のCMがよぎり、直後ドリフが現れる。
39歳の癖になぜ知っているという意見は無視する。
「ご冗談はやめていただきたいのですが」
「事実だ。でなければこの建物はなんなんだ?」
「・・・・・・わかってます。はい」
日本人?じゃあこの建物は? ちくわは?
駄目だ、考えては駄目だ。ここで考えることは無意味にぐるぐるバットするにも等しい。
堂々巡りになるだけで、答えも利益も得られやしない。
「どうぞ、お話を続けてください」
「もちろんだ」
少女父は、一語一語を噛み締めるようにして、堆積した事実を語り始めた。