コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 【更新再開】怪盗ユア-満月の夜はBad night- ( No.10 )
- 日時: 2015/10/01 13:14
- 名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: iGp9Ir2k)
「しかし……一体全体、誰が何のためにユアの学校の理事長に予告状を送り付けたのか、だが……」
「まだ一切犯人の目星はついていないし、ましてや何の目的で今回予告状を理事長に送り付けたのかすら、謎なんだよね」
柚亜とパパさんの二人は、うーむ、と腕を組んで、同じように考え込むポーズをとっている。
くり須は「さすが親子ね……」とぼやき、再度紅茶に口をつけた。
と、ふと気になった疑問が頭をよぎる。
「ねえ、柚亜」
「ン? どした、くり須」
「予告状の内容なんだけどね、」
「『ある生徒の秘密を奪いにきます』ってやつ?」
「そう。『とある生徒の秘密』……これって、なんだと思う?」
「……、くり須ちゃんは、どういう、意味だと思うのかな」
テーブル越しに、パパさんが身を乗りだして聞いてくる。
「あの、ですね。少し気になったんですけど。……『ただ』の生徒の『秘密』なんかを奪って、一体誰が得するんだろうなーって思って」
「犯人のメリット、ということだね」
「はい。あ、あくまで私のふとした疑問なんですけど……」
リビングに沈黙が流れる。
しばらくして、
「今はまだ情報が足りないね。……そうだ、ユア」
パパさんの目が、きらりと光った。ように見えた。
「なあに? パパさん」
「ユア、怪盗として、師匠からの指令だ。『怪盗ローズ』の正体と、その目的を暴くこと。……いいね?」
「ええーっ?!」
柚亜がいつにも増して大きな声を上げる。
「パパさん、そりゃ突然過ぎるってば!」
「怪盗ローズはユアの学校を狙っている。とすれば、盗みに入る学校を偵察しているはずだ。当然、学校周辺に怪盗ローズが巣食っているに違いない。となれば、普段から学校に通うユア、お前が学校周辺を調べるのが、一番怪しまれずにすむ」
「まあパパさんが学校周辺を嗅ぎまわってたら、確かに不審者だわね」
「つまり! ここはユア、お前が調べるのが安心安全というわけだ」
「……そうだね」
「無論、パパさんもユアがピンチの時には駆けつける。それまでは怪盗ユア、見習いのお前に、この問題を託す。分かったね」
「…………」
しばらく口を一文字に結んで、眉をしかめてパパさんを見ていた柚亜だったが、ふう、と息を吐くと、
「分かった」
こくりと首を縦に振った。
途端にパパさんの表情がぱっと明るくなり、「良かった、良かった」としきりに頷く。
「ただしユア、無理は禁物だからね」
「どこぞの中年怪盗さんみたく、無茶はしませんよーだ」
「そっ、それは誰のことだ、ユア!」
「さあね〜?」
「はぐらかすな! コラっ、ユア!」
突如言い合いを始めた親子(主に、パパさんの一方的なアレであったが)を尻目に、くり須はカップに口をつけて、アハハと苦笑するのであった。
何故か、胸騒ぎを覚えながらも——。
【mission1、完了。】
- Re: 【更新再開】怪盗ユア-満月の夜はBad night- ( No.11 )
- 日時: 2015/10/14 09:50
- 名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: uWCnjyP1)
【mission2:カイトウさん最初の任務】
正統な怪盗の血筋である海東 柚亜が実の父親から指令を受けてから一夜明けて——。
何故か柚亜の協力関係者として巻き込まれてしまった相原 くり須は、登校するなり教室の自分の机に勢いよく突っ伏していた。
恥ずかしながらその際にゴンっと鈍い音をたててしまったが、気にしないことにする。
「あっれー、相原ちゃん。どうしたのー?」
そこへ、誰かが声をかけてきた。
くり須はその甲高い声が特徴的な主に応えるべくゆっくりと顔を上げる。
「ああ、千咲。おはよう。……うん、ちょっとね」
「いつも一緒に登校してくる柚亜っちが見当たらないけどー……お休み?」
「…………」
そうなのだ。
その《柚亜っち》こと《海東 柚亜》であるが。
くり須が朝からこんなにも疲れている原因ははからずもこの少女にあった。
昨日、パパさんから『怪盗ローズ』なる者の正体を調査せよとの指令を受けた柚亜は、朝から異様に張り切っていた。見習いながらも《一人の怪盗》として指令が下ったためだろうか。
とにかくくり須が朝の待ち合わせ場所に行くと、そこに仁王立ちで構えている柚亜の姿があった。
「……お、おはよう柚亜。早いわね。まだ7時よ。いつもの集合時間より一時間も早い……」
おずおずと切り出したくり須に、柚亜がビシッと指を突きつける。
「遅いぞっ、くり須。いつどこで奴が嗅ぎ回っているともしれないんだからね! ほら、行くわよ!」
「……す、凄いやる気ね……」
ほらほら、と急かされて、くり須は仕方無しに学校に向かって歩き始めた。
その隣を、何故か突然サングラスをかけて前かがみになって歩き出す柚亜。
周囲をゆっくり訝しげに見回しながら歩いている柚亜に気づき、くり須は思わずギョッと目を見開いて凝視していた。
「……柚亜。なにその歩き方。どこぞのスパイみたいね」
「フフフ、そうよっ。いつどこで《奴》が怪しげなことを企んでいるとも分からないからねっ。こうして、しっかり私が見張らなくっちゃ!」
「…………あのねえ」
くり須は肩をすくめると、なおも怪しげな行動をしている柚亜の背中に向かって、
「……柚亜、私先に行くわね」
不審者極まりない態度の柚亜の返事も聞かずにくり須は一人学校へと向かったのであった。