コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: .・。~涙色~.・。*-Namidairo-* ( No.3 )
- 日時: 2015/07/19 21:54
- 名前: 佳織* (ID: n8TUCoBB)
エピソード2:変わらない想い。
————ピピピピッ…
カチッ。
目覚ましの音に目を開けると
眩しげな朝の光が窓の外から差し込んでいた。
重たい体を起こしてカーテンを開けながら
雲ひとつない澄みきった空を見ながら、そっと呟いた。
「戻りたいな…あの頃に」
そう感じてしまうのは、きっと
久しぶりにあの頃の夢を見てしまったせいだ———。
そんな風に何の根拠もない理由を自分自身に言い聞かせて
朝の身支度をして、わたしは学校へと向かった。
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「あーおいっ!!おっはよーん」
「明日香っ。おはよー」
下駄箱で偶然会ったのは、明日香だった。
明日香は成長しても変わらずのしっかり者で
学年でも上位をキープしている優等生。
おまけにクラスの学級委員も努める完璧女子。
「葵にしては、珍しく早い登校じゃん!!どうしたの??」
「失礼な!!わたしだってねー、たまには真面目な時もあるんですー」
「あははっ…心を入れ換えたってわけかぁ」
「もうっ…そーやって人をバカにしてー」
ドンッ。
話に夢中になっていてよそ見をしていると
勢いよく誰かとぶつかってしまった。
「あっ…すみませ———」
ぶつかった相手に一瞬、固まる。
「こちらこそ…わる…い」
相手も固まる。
だって。そりゃあ、固まっちゃうよ。
相手は…もう、何年も口を聞いていない人、なんだから。
「えっ…と…その———」
「裕紀ー!!なにしてんだよー」
か細いわたしの声は簡単にもかきけされてしまった。
きっと、彼の耳にはわたしの声なんか届いていないだろう。
「怪我とか…ねーか??……南さん」
優しい声でそう聞く彼の瞳はとても透き通っていて
綺麗だった。
「うん……平気だよ。ごめんね、菅原くん」
早口でそう言ってわたしは
その場から逃げるように立ち去った。
「あっ!!ちょっと、葵!!!!」
呼び止める明日香の声も無視して。
頭では分かっていた。
いつまでも小さい頃の関係のままではいられないってこと。
成長すればするほど
男女間の距離なんか離れてしまうってこと。
分かっている、分かっているのに———。
———『南さん』
あんな他人みたいな呼ばれ方をされたら。
「ッ…ヒック……」
泣かずになんかいられなかった。
だって、
わたしは。
小さい頃から変わらずに
貴方のことが、 今だって好きだから———。