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Re: .・。~涙色~.・。*-Namidairo-* ( No.4 )
日時: 2015/08/02 14:44
名前: 佳織* (ID: gqZQq2JR)

エピソード3:彼と彼女。






「バカだなぁ……わたし」

泣き腫らした赤い瞳で。
わたしは廊下で1人、 ポツリと小さく呟いた。

泣いて……泣いて……
やっと気づいた。


わたしは、 まだ完全に。
菅原くんへの恋心を忘れられずにいて。


そして、 いまだに


彼の事が好きだってこと———。



「葵??……何してんだよ、こんな所で」


背中から不意に声をかけられて、ビックリして振り向くと。
そこには、幼馴染の河野直樹の姿があった。
直樹は、高校に入った今でも、変わらずわたしに接してくれる唯一の男子だ。


「なんだ、直樹か…。驚かせないでよね」
「わりぃわりぃ。葵が一人でボーっと立ってたから何してんのかなーって思って声かけちまった」
「別にぃ。ちょっと考え事をしてただけだよ」

ニコニコッと取り繕った笑顔でおちゃらけた感じで答えると。
不意に直樹の瞳が真剣になって。
低い声で静かに言う。

「目、腫れてんぞ。……泣いてたのか??」

その言葉に。
何も言い返すことが出来なくって。
わたしは直樹から視線を逸らした。

やっぱり——。

「やっぱり……かなわないなぁ、直樹には。何でもお見通しだねっ」

昔っからそうだった。
直樹には、簡単にわたしの嘘なんかばれちゃうんだよね。

「そりゃぁ……ずっと見てたからな、葵の事」

切なげな表情でそう言う直樹の顔に。
不覚にもドキッとしてしまった。

「で??……泣いてた理由はやっぱりアイツ??」

直樹が差すアイツというのは、 菅原くんのことだ。
わたしは小さくうなずいた。
すると、直樹ははぁっと大きくため息をついて大声で言う。

「お前なぁ…あんな奴のこと、いい加減忘れろよ。いつまで好きなわけ??」
「しょうがないじゃん。……忘れたくても忘れられないんだから」

逆にどうしたら忘れられるのか、教えてほしいくらいだよ。

「———じゃあ、俺が忘れさせてあげようか??」
「えっ…」

長いまつ毛に透き通った瞳でわたしを見つめながらそう言う直樹に。
一瞬、 鼓動が高まってしまった。

けれど、すぐにハッとなって
すぐさま言い返した。

「あのねぇっ…冗談でも言って良い事と悪い事があるんだからねっ」

そう吐き捨てて、背中を向けて足早に立ち去った。

全く…直樹の奴。
からかうにもほどがあるっつーの。





□ ■ □ ■ □ ■ □




*直樹side*



「マジかよ…アイツ」

『冗談でも言って良い事と悪い事があるんだからねっ』

バカかよ。……俺だって、 冗談でそんないい加減なこと言うはずがねぇよ。

「あらまー…フラれちゃったね、直樹」
「んだよ、お前かよ。七海」

ニヤニヤした顔で俺に近づいてきたのは幼馴染の七海だった。
小さい頃と変わらずの小柄な体系に整った容姿。
男子からの人気が耐えない女子だ。

そして、俺たちの中で唯一。
いまだに菅原と仲の良い奴。

「直樹も大変だね。好きな女の子はいまだに初恋の男の子を想っていて…自分のことを全く見てもらえずにいて」
「うっせぇ!!」

———ダンっ。

俺は思いっきり廊下の柱に拳をぶつけた。
そんな俺に構わず見下す七海。

「おー怖い怖い。そんなんじゃあ、葵に嫌われるよ」

そう吐き捨てて、七海は俺から去って行った。





むかつくけど。




認めたくなんかないけど。





アイツの言っていることは全部、 正しい。









俺の事なんか見てもらえなくたっていい。
アイツが幸せになってくれればそれでいい。









そう思ってた、 今までは。














でも。
アイツに冷たくする菅原の態度に。
俺は許すことができなくなっている。


アイツを、 菅原なんかに渡したくねーって思っている。















俺だったら…絶対に
葵のこと、 幸せにできるのにって思っている。











「もう、限界…なのかもしれねーな」









俺は、 きっと。
もう。











この想いを我慢することができねーんだな。