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Re: 壊れた恋の羅針盤。【12歳冬】 ( No.23 )
日時: 2015/12/26 23:14
名前: ことり ◆E09mQJ4Ms. (ID: 6VawRV/m)



「麻里……!!」

いきなりだった。

突然だった。

「お母さんがっ!」


_____「え?嘘でしょ…」


*

「へえ、麻里ちゃん都会にすんでたんだ!いいないいな」

立夏ちゃんと話していると時間はすぐ過ぎた。

楽しかった、このときが。
心からそう思う。

夕日が沈みかけてきた。
お母さん、遅いな。

立夏ちゃんとの話にも区切りがつき、もう帰ろう、そう思っていたときだった。

「麻里…!!お母さんが…!」

おばあちゃんが走って、バス停までやって来た。

「お母さん…こ…が…あって…」

息切れしているおばあちゃんは、なにをいっているかよく聞き取れなかった。
でも、なにかお母さんにあったことは分かった。
普段、落ち着いてて冷静な”あのおばあちゃんが取り乱すなんて。
よほどお母さんの身に何かが…

まさか、交通事故にでも?

嫌だ。
まだ死なないでよ。おいてかないでよ。

でも、違った。
お母さんの身には、何もなかった。
何かあったのは、私の方だった。


____「え…?お母さんが家出…?私をおいて…?」

認めたくなかった。
いってきます、そういう母親は今から私を捨てにいくとこだったんだ。



バカみたい。
捨てられるのに、おいてかれるのに「いってらっしゃい」って私は言った。

何それ…

ほんとバカみたい。
…最悪。



「麻里ちゃん…かわいそう…」

立夏ちゃんはそう言ったが、私はかわいそうなんかじゃない。

私は…かわいそうなんかじゃないから。同情は、嫌いだ。


込み上げてくるのは、悲しい思いなんかじゃない。
腹のそこから込み上げてくるような、どす黒い思い。

黒い、赤黒いような塊。

それは、きっと「怒り」というのだろう。

いや、そんなことでは表現できない。
きっと。


ただ、そんな気持ちでいっぱいだった。

「麻里ちゃん…」

そんなふうに哀れまないで。
余計、みじめに感じる……

「立夏、帰るぞ」

今までずっと黙っていた文くんが唐突に立夏ちゃんに告げて、立ち去ろうとした。

けど、正直ありがたい。
今、二人にこの場にいられても困る。

「え、でも!」
「かえるっつってんだろ」

そういって、文くんは私のほうを見て笑った。

……気づかれてたか。


「麻里…私たちも帰ろう」


そう言ったおばあちゃんの目は涙ぐんだ、真剣な目をしていた。