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第一章 涙が出なかった少女の話 ( No.1 )
日時: 2016/01/09 17:17
名前: のれり (ID: R4l9RSpR)

第一章 涙が出なかった少女の話


私がまだお母さんのお腹でお母さんのお腹の中を蹴っているとき、お父さんが名前をつけてくれました。

私の名前は愛華。石原 愛華(いしはら あいか)と、名付けられました。
お母さんもお父さんも、いつだって私に話しかけてくれました。早く出ておいで、愛華。私達の宝物。
そんな優しい声が、いつも私を包み込んでくれているようでした。

私は、そんな優しいお父さんとお母さんの希望に応えたかった。
だけれど、どうしても、お母さんのお腹から出ることはできませんでした。

だけど。
あるとき、チャンスがやって来ました。
なんだか、頭のほうがウズウズするのです。どうやら、お母さんのお腹から出られるようです!
私は一生懸命手や足を動かして、身をよじらせながら這い出ようとしました。
そして、やっとのことでお母さんのお腹から、出ることができました!

でも、出た瞬間にすごく苦しくなりました。
苦しくて、苦しくて、声を出したくなりました。
でも、私の口から出たのは、けたたましい声ではなく、かすれたような声と、少量の空気だけでした。

苦しいけれど、声をあげられない。
グルグルと目が回るような、お腹画かき混ぜられるような、そんな感覚が私を襲いました。

すると、いきなりふっ、と呼吸が楽になりました。
今までの気持ちの悪い、グルグルとした感覚はふわふわと心地よいものに変わりました。
なぜか、ひどく心地が良いのです。