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第一章 涙が出なかった少女の話 ( No.13 )
日時: 2016/01/09 19:19
名前: のれり (ID: R4l9RSpR)

暗闇の中でまた誰かが私を呼んでいます。

とても、悲しそうな声です。

この声を、私は知っているような気がします。

でも__……

思い出せません。

この声の主は……誰でしょう——?



パチリと目を開けると、またしても強い光が私の両目を攻撃しました。
でも、なんだか心地がいいのです。
うっすらと目を開けました。

すると、そこには__……

黒い毛玉が私のことを見つめていました。
何でしょう!?なんなのですか!?この毛玉?

「愛華……?起きたの?」


!!!!!!!!!!!


けっ……毛玉がしゃべりました!?
今、私の名前を__……

「あ……そっかぁ……愛華は初めて見るのか。愛華。僕だよ。レイ」

れ……い……?

あぁ、そういえば、レイはこんな声をしてました。
すっかり忘れていました。

「もう目が見えるようになったんだね?じゃあ、自己紹介でもしとこうか!
僕の名前はレイ。黒猫のレイだよ。パパさんとママさんに飼われてるんだ。
あ、そうそう。こっちとそっち。どっちがいい?」

レイが手(いや、足でしょうか?)で2つの布を指さしました。
レイが動くたびに、チリリと鈴が鳴って、可愛いです。
猫というのは、毛むくじゃらだけど、なんだか可愛く思います。

「いつまでも生まれたままの姿じゃまずいでしょ?
だから、僕が服を着せてあげるから、どっちがいいか選んで?」

私は、動くのが面倒なので、自分に一番近い方を指さしました。

「えー?これ?これがいいの?でもこっちよりあっちのほうが愛華に合うと思うからあっち着てね」

………。
選ばせる気ないですよね?それ。


レイは猫さんの手で器用に服を着せてくれました。
すこし、動きづらくなりましたが、ふりふりの服はとても可愛いので、レイのせんすはなかなかいいみたいです!

「それにしても、こんなに手のかからない赤ちゃんているのかなぁ……
ミルクやおむつの心配もないし、ちゃんと言うことを聞いてくれる!」

『いうことを聞かせる』の、まちがいでは?

「それになんと言っても愛華は泣かないからね!」


ズシリ、と体に何かが乗っかってきたような感覚がしました。
レイの一言が、なんだかとても、重たいのです。

「あ……そうか。愛華にはまだ言ってなかったね」

レイは、前足をぴしりと揃えて、私の見つめて来ました。
何が始まるのでしょうか。

「愛華……少し、君のことを話そうか」