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第一章 涙が出なかった少女の話 ( No.17 )
日時: 2016/01/09 19:37
名前: のれり (ID: R4l9RSpR)

レイのクリクリとした瞳は、私のことをしっかりと捉えていました。

「愛華……君、生まれてきた時に……泣かずに産まれて来ちゃったんだってね。ママさんとパパさんが話しているのを聞いたんだ。もう、ママさん……家に帰ってきてるんだ」

お母さんが……。
私は、あたりを見回しましたが、黒い猫の他に、人はいませんでした。

そんな私を見て、レイはブホッと吹き出しました。

「あ、愛華……ママさんはここにはいないよ!ハハッ……面白いね、愛華!」

何故か知らないけど、むっとした感じが胸の中を満たす感じがしました。

「ぁうあ~あいーう~」

また、意味不明な言葉が出てきました。
もう!口に出せないのは悔しいです!私はパチリと床を叩きました。

「わ!ごめんごめん!怒んないでよ、愛華。ところで、話を元に戻すけどさ、
愛華はね、本当はここにいるのはいけないんだ」

……?
どういうことでしょう?ここ……というのは、この家のことでしょうか?

「ん~……なんて言ったらいいかなぁ。……とりあえず……未練があってこの世にとどまってるわけだから……その未練を断ち切ればいいのか?……でも、
愛華の未練てなんだ?うーん……まだ赤ちゃんだからなぁ……」

レイは一人でブツブツと私のわからない言葉を言い始めました。
なんのことだかはわかりませんが、所々私の名前が出てきているので、
きっと私のことを言っているのでしょう。


すると、いきなり扉が開きました。

「ちょっとレイ!?にゃーにゃー鳴いて、何かいるの?」

部屋に入って来た女性は、レイをまっすぐと見つめながらレイに詰め寄りました。

「なんでもないよ、ママさん」

「何にもいないじゃない…静かにしてね、ご近所迷惑になるからね」

その女性は優しくそう言うと、レイの頭をひとなでして部屋から出て行ってしまいました。
私のことなど、見向きもしないで。

ママさん……。
レイは、さっきの女性のことを、ママさんと言いました。
……ということは……さっきの女性が、私の……お母さん。
お母さんなんだ……!

初めて見たお母さんは、なんだかとても疲れているように見えました。
私のことを見てくれないお母さんに、なぜか胸が締め付けられるようでした。





…………。
というか。

私は、お母さんの一言が何故か気になりました。

『にゃーにゃー』??

「……?どうしたの、愛華。そんな不思議そうな顔して。あ、そうかぁ……。
ねぇ、愛華。僕の言葉はさ、愛華には、普通に人が話してるように聞こえるでしょ?」

私はこくこくと首を縦に振りました。
実際に、そう話しているのではないのでしょうか?

「うんうん♪だよね。でもね、愛華。普通の人間には、僕は『にゃーにゃー』
って言ってるようにしか聞こえないんだよ?」

!?!?!?
驚きの新事実です!
私にしかレイの言葉はわかっていなかったのですね!?
目が白黒しそうでした。
と、そんな私の様子を見ていたレイは

「にゃー」

と一声上げました。
なぜでしょう。ニヤリと笑っているようにしか見えないレイの顔が何故か異様に叩きたくなりました。

わざとですよね?わざとですよね!?
レイの声は、人が猫の鳴き真似をしているかのような感じでした。
私をからかって遊んでるのでしょうか!?



ああ、それから、疑いがもうひとつ。


レイって本当に、思ってることがわかるんじゃないでしょうか………?