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第二章 何でも見えてしまう少年の話 ( No.38 )
日時: 2016/01/09 19:58
名前: のれり (ID: R4l9RSpR)

この類の低級霊共は塩に弱い。

俺は受け取った塩を手のひらいっぱいにつかみとり、俺にしか見ることのできない女共にぶちまけた。

すると、奴らはガラスを引っ掻いたような叫び声をあげ、どこかへと消えていった。

「あぁっ!春様が浄化なさっているわ!」
「きっと、この世の穢れを清めているのよ!」
「そうに違いないわ!」
「それにしても、なんて美しいんでしょう!」

「…………」


俺は、姦しく騒ぎ立てる女共を置いて俺は路地裏を抜けだした。
まあ、この『近衛隊』とかいう女でもは俺がどんなに距離をとろうとしても絶対に1メートル後ろにピッタリと張り付いてくるため、置いていけるはずもないのだが。

今日はそんな近衛隊の見張り(警護?)が緩く、ラクラク……ではないが、運良く撒けたところを、運悪くストーカー女に捕まってしまったのだ。

本当に……俺に、プライベートというものはないんじゃないかと思うぐらいだ。昼や朝はこいつらに付きまとわれ、夜はストーカー女達に家の中を覗かれる。

ひどい時なんかは、うっかり戸締まりを忘れようものなら家の中に入られた。
その時はさすがに警察沙汰になったが、それ以降、他のストーカー共は慎重になったようで、表立ったことでなく、裏でコソコソを俺を覗き見るようになった。


まあ、そんなこんなでストーカーに付きまとわれている俺にとって、この『近衛隊』というやつはすごく便利だ。
こいつらが俺の周りにへばりついているときは、ストーカー女共は俺に手を出してこないし、何より俺の身の安全は確実だ。
だがまあ、この鉄壁の警護が煩わしく感じることもあるがな。

女に守ってもらう、というのも釈然としないのだが、仕方がない。
こいつらは俺よりも断然強い。

ストーカーから身を守るため、幼い頃から外に出なかった俺はすこぶる体が弱い。そのせいで、家から学校まで歩くのもままならず、中学までずっと車通学だった。中3になった今、やっと徒歩通学ができるようになったのだ。

そんな俺と違って、この『近衛隊』のやつらは武にたけており、容姿も人並み以上。側においておかない理由が見つからない。
確かに、稀に鬱陶しく思うこともあるが、それ以外は俺の生活の必需品と言っても過言ではないだろう。