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第二章 何でも見えてしまう少年の話 ( No.42 )
日時: 2016/01/09 20:27
名前: のれり (ID: R4l9RSpR)

「春様、今日は本当に申し訳ありませんでした!本当にお怪我はありませんか?」

背後1メートルという決まりの壁を突き破って俺の半歩後ろへ来たのは、先ほどのホイッスル少女だ。
名前は……なんと言っただろう?

「あの……さ。何度も言ってると思うけど、その『春様』って言うの。やめてもらえないか?」
「あっ……ご、ごめんなさいっ!春さm……春くんっ!」
「…………。うん……。ありがとう……ぇーと……?」

名前を呼ぼうとしたが、どうしても思い出せない。
歩みを止めないまま、首だけをひねり、右側にいる少女の顔を覗き込む。

「あっ……な、凪……です……」
「ナギ?」
「はいっ」
「そっか、いい名前だな」
「……っ!?あ、ぁあ、ありがとう……ござい……まス……」

ホイッスル少女あらため、凪は指先ギリギリまでの長いパーカの袖で口元を隠し、耳まで真っ赤にしながらだんだんと俺と距離を離していき、やがてまた俺の1メートル後にピッタリとくっついてきた。

世間一般……いや、アイツならきっとフラグがなんだのと騒ぎたてるだろうが……

一体、何がフラグなのやら。

ただの社交辞令にいちいち反応している自意識過剰乙シチュだろ、これ。一体なんのフラグだと言うんだ。
意味がわからん。



そんなことを考えているうちに、やっとの事で家についたわけだ。
俺が家の敷地内に入り、女共に別れを告げると、彼女らは自然と四方に分散した。俺、確信するわ。あいつらは絶対に彼氏はできない。

どうでもいいな、そんなこと。うん。

玄関の扉に鍵をねじ込み、ドアを開けた。
最近は、あの近衛隊のお陰でストーカー被害も減り、両親は安心したのか、最近は帰りが遅い。
親が働いてくれているおかげで、こうして生活していられるのだから、帰りが遅いことに関して別に不満があるわけでもなく、ましてや親がいなくて困るような歳でもない。

「よぉ、春〜☆おかえりー!遅かったな☆なんかあった?」
「…………おい。どうしてお前は人の家でそんなにくつろいでるんだ!?」

だから、母さん。こんな奴をわざわざ留守番に使わないでくれ。