コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

第二章 何でも見えてしまう少年の話 ( No.48 )
日時: 2016/01/09 20:36
名前: のれり (ID: R4l9RSpR)

部屋の一角を陣取り、にポテチの空き袋をいくつも散らからせ、70インチの大型テレビから顔を一切挙げずにテレビゲームに熱中にしている、この_____女。

「なははー!まあ、気にすんなって!そろそろ飯ができるぞー……ってうわぁお!!3コンボーー!!!キターーーッ☆」
コイツが足をジタバタとさせるたびに、高い位置で乱雑に結ばれた髪がふわふわと揺れる。なんとなく不快だ。
モップが空を掃除しているようだ。

「おい、だからいい加減に__」
「おーい、杏ー!飯出来たからそっち片付けてね……っと…春、おかえり!もう飯できっから手、洗ってきなよ」
「おーす!!了解なりー☆」
「…………」

キッチンの方から両手に皿を持ち現れたのは、彼女_____……の、ハズもなく、紛うことなき男だ。
こいつは、新名 奏(にいな かなで)と言う、俺の幼馴染の一人だ。
コイツは昔から料理がうまく、こうして毎日俺の家に来ては、俺の飯を作ってくれるいい奴だ。

いや、別に飯につられているわけではない。
ただ、友人として毎日家に招いているわけで、飯が目当てで毎日食材を揃えたりだとか、家の鍵を渡しているのではないぞ。
勘違いするなよ?
両親も奏の飯を気に入っているから、毎日多めに作ってもらっているわけで、別に食い意地が張ってるとか、そういうわけではない。
決して。

まあ、それはともかく、だ。
問題はこの、女。
飯に目がくらんでもはや奏の下僕と化している、このモップ女。
こいつの名前は…………狗屋 杏(いぬや あん)。
コイツは本当に最悪だ。
家のスナック菓子を毎日のように食い漁り、ましてや俺の貴重な食糧である奏の飯まで食いやがる。

俺がいくら両親にスナック菓子を買い溜めるなと言っても、何故かこいつは両親に……特に母親にずいぶんと好かれているらしく、スナックのストックが切れることはない。
おかげでこいつは付け上がり、今もこうして当然の如く自身のゲーム類を持ち込み、俺の家で菓子やら飯やらを食い散らかし、自分の家へと去っていく。

……思い起こせば、こいつほど本能のままに生きている奴はいないと思う程だ。一応、こいつも俺の幼馴染の一人だ。認めたくないがな。
もう一人の姿が見えないのが不安だが、まあ……今日は直帰だったのだろう。


そんな事を思っているうちに、奏とモップがテキパキと(どちらかというと、奏がテキパキ、モップがダラダラ)料理を運んでいた。

「もぅ!春~手伝いをしない奴は食べる権利はないぞ~」
「あ''?誰に口を利いてんだ?ん?食わせねーぞ?」
「ふ~んだ春が作ったわけでもないのに~☆」
「そうか、そんなに追いだされたいか」
「まあまあまあ!!二人共!ご飯食べよ!冷めるからさ、ね?」
「分かったのだよ~☆春はほっとく~」
「…………」

せっかくの奏の手料理が冷めてしまってはもったいない。
釈然としない気持ちを抱えながらも、テーブルについた。

今日の夕食は、奏が得意とする肉じゃがだ。
ほんのりと甘い味付けがやみつきになる一品だ。
(モップのせいで)疲れた体にはちょうどいい甘みだ。

「うんまぁ~☆奏、将来……いやっ今からでもいい!!ボクのお家にお嫁においでよ☆」
「考えておくね。あっ……ほらっ!杏こぼしてるよ!」
「やばばっ!もったいない!!」
「…………」

やはり、このモップと奏は性別を変えたほうが世の中うまくいくんじゃないだろうか?

テーブルに落ちたじゃがいもを「三秒ルールだ!問題なし☆」とか言って手でつまみ食っているモップを見ながら、しみじみと思った。