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Re: 我ら変人部っ!【参照100感謝!】 ( No.6 )
日時: 2015/12/06 11:37
名前: 彼方 (ID: dzyZ6unJ)

「こ、こんちにはー……」
 俺は恐る恐る屋上へのドアを開けた。

 入部してから一週間、未だに少し慣れない部分がある。
 なんせ、ドSとドMのいる部活だ。心臓に悪いようなことがよく起こる。
 だがまぁ、毎日哀衣先輩に会えるのは非常に嬉しい。
 そう言えば哀衣先輩は、どんな趣味があるんだろうか。
 ここは変人じゃないと入れないはず、だ。ということは、変人と呼ぶに値する趣味をしているはず。

「……な……ッ!?」
 ____そこで目に飛び込んできた光景は、今までで一番心臓に悪い光景だった。

「……そう、そのまま静止していてくれ……あ、待て、顔を変えるな。トロ顔のままでいろ」
「……ふぁい……っ」
 ……どんな光景かというと、マゾ先輩のことを哀衣先輩が必死の形相でスケッチをしていたのだ。
 ただマゾ先輩は恍惚とした顔で、ミニスカートのメイド服を着てM字開脚をしていたが。
 ちなみにパンツは黒のトランクスだった。誰得だよこれ。

 俺は何も言わずUターンし、ドアを閉めた。そしてそのまま頭を抱えた。
「…………今のは夢だ今のは夢だ今のは夢だ今のは夢だ今のは____」
「何だヘタレ、来たのか」
 何の前触れもなくドアが開き、哀衣先輩が平然とした顔で俺の顔を覗き込んだ。
「う、うわああっ!?すみませんっ、何か見ちゃいけないところ見ちゃいましたよね……っ!?」

 すると哀衣先輩は少し考え込むような表情を見せ、爆弾を落とした。
「そうか。まだヘタレには言っていなかったな。
 私は腐女子なんだ。今のはコミケに出店する同人誌のため、マゾに協力してもらっていたんだ」
 俺はしばらく無言でフリーズした。

 ____腐女子、とな。
 俺の中の腐女子のイメージは、
「ヘタレ受けおいしすぎるお……デュフ、デュフフ」
 と笑いながら床一面にアブナイBL本を並べ、床をゴロゴロ転げ回ってるイメージなんだが。
 それか、
「何あのパーカー君可愛すぎる……そのまま隣の眼鏡君に『ピー』で『ピー』されて『ピー』になっちゃったりしてほしいわ……萌え……」
 と見知らぬ男性二人を見ながら、口元を抑えているイメージだ。
 あえて伏字にしたのは、口に出すべきことではないからだ。内容はご想像にお任せします。

 ____いや、決して姉がそういう腐女子な訳ではない。
 これもただのイメージではなく、実際に姉がやってのけたことの訳でもない。決して。
 大嘘だが。

「……引くか?」
 しかし。しかしである。
 そんな腐女子にマイナスなイメージのある俺だが、それ以前に俺はロリコンであり、哀衣先輩信奉者なのである。
 とどのつまり、
「そ、そんな訳ないじゃないですかぁっ!?あ、あの、俺の姉が腐女子なもんで、そこら辺の一般人よりは理解があるつもりです!大丈夫です、何も問題はありませんっ!」
 ____哀衣先輩に心配そうな表情で上目遣いをされたら、ひとたまりもないのだ。
 腐女子いいよね、うん。そういう趣味も全然ありだと思います。

「ヘタレならそう言ってくれると思っていた」
 にこっと笑う哀衣先輩。
 その笑顔に冗談抜きで心臓が撃ち抜かれた。天使か。
「ジーザス……ッ」
 思わずそう呟いてしまう程度には萌えた。

 哀衣先輩は思いついたように言った。
「……なら一つ頼みがあるんだが。何、簡単なことだ。あの状態のマゾを押し倒すだけで「あーっ!用事を思い出しました!すみません、一回帰りますっ!」
 俺はそう残して大急ぎで階段を降りた。

 いくら哀衣先輩でも、そんなん冗談じゃない。
 あんな気持ち悪い状態のマゾ先輩を押し倒すなんて、できる訳がない。
 出来ればもう二度とあんなマゾ先輩は見たくない。……女装は似合っていたが。

 何が悲しくてドMの男を押し倒さなきゃならないのだ。押し倒すならロリがいい。
 いや、ロリは押し倒すというより後ろから抱きつくのがいいな。
 抱きついたらそのロリに『お、お兄ちゃんっ、恥ずかしいよぉ〜』なんて言われちゃったりして。
 そしたら俺、死んでもいい。

 そう不毛な想像を巡らせながら歩いていると、
「…………迷った…………」
 ____現在地がどこだか分からなくなった。阿保か俺。



「……どこだここ」
 適当に歩いていると、そこは一切見覚えのない場所になっていった。
 半ばやけくそになって歩き続けるが、それでもここがどこだか全くわからない。

 でも、ただ見覚えのない場所だったらまだよかった。
 そう、そこはお化け屋敷もかくやと思われるような廊下だったのだ。
 ここ、高校だよな?何で廃校だと言われても納得しちゃうようなボロい廊下な訳?
 その内近くからナニカが飛び出して来ないかと怖くなった。
 ホラーは苦手分野だ。お化け屋敷なんて最後まで行き着いた試しがない。


「…………れ……んじを…………せんと………………さんことを…………」
「…………ひ……ッ!?」
 突如、奥から囁き声が聞こえた。女性の低い声だった。
 ____何がいるんだ、奥に。

 選択肢は三つ。
 一つ目、何も聞かなかったことにして戻る。
 二つ目、何も聞かなかったことにしてそのまま行く。
 三つ目、声の正体を突き止める。

 一つ目を選びたいのは山々だが、戻ったところで現在地が分からなければ意味がない。
 俺の経験上、戻るより進むべきなのだ。
 三つ目は論外だから、ここは二つ目か____。

「………………クソッ、また失敗か!?一体いつになったら召喚が成功するの、だ……」
「う、うわあああっ!ご、ごめんなさいごめんなさいぃっ!?」
 突如、一つ先の教室のドアが開き、誰かが顔を出した。
 俺はすっかりビビってしまって、一瞬の内に態勢を土下座に変え、何とも知れぬモノに謝った。

「…………おい、貴様。表を上げい」
 ガタガタ震えながら土下座していると、上から声が降ってきた。女子の声だった。
 そろそろと顔を上げると、そこにいたのは普通の生徒だった。
「……悪霊じゃ、なかったぁ……」
 よく見ると、彼女は学年一の天才とも称される高校一年生の女子生徒だった。ただ、恐ろしく愛想が悪いらしいが。
 名前は確か____
「萌澤さん……だよな?」
 萌澤 冬姫、だったはずだ。

 すると彼女は酷く狼狽した。
「き、貴様、我が主の知り合いか……!?」
「………………はぁ?」