コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 君に捧げた初恋 (処女作) ( No.4 )
- 日時: 2015/08/20 17:34
- 名前: 華憐 (ID: 8GPKKkoN)
招待されたグループの、参加ボタンをタップする。
すでに、そこそこのメンバーが揃ってはいたが、
有紗たち以外の人の名前と顔が一致しない。
来週からプレゼンテーションがはじまる。
このゼミは、私が所属する法学部の中でも、専門性が高く、
難しいゼミとして知られている。
初日にはさすがに度肝を抜かれたが、
今思えば、ゼミ生の大半がメガネ集団でも、
おかしくないのかもしれない、と私は思った。
ブー。
ポケットの中でiPhoneが小さく揺れる。
[ LINE 有紗 : やっほー!初音!
グループLINEから登録した!来週…]
通知だけ確認して、再びiPhoneをポケットに戻そうとしたとき、
ブーと、再びバイブが鳴った。
[LINE 有紗 : てか、吉野と美乃里ちゃん、2人で城崎神社 行くらしい!]
[LINE 有紗 : 仲良くなるペース早くない? 来週、事情聴取しなきゃだ…]
ふう、と声にならない息を吐く。
ありがとう!来週楽しみにしてる!
お店…どうしようか?
まじで??初耳!
もう、吉野呼びなんだね。笑
ていうか、それ、どうやって聞き出したの?
美乃里ちゃんってどんな子?
返す言葉はいくらでもあるのに、なぜか気が進まず、
戻しかけていた iPhoneを無理やりポケットに押し込んだ。
なるほどな、と思った。
私が、茉結たちと意気投合した以上に、有紗は気合いが入っていたのか。
唯一、有紗に言わせれば「まともそうな」吉野くんが、お目当てなのか。
美乃里ちゃんと、どう近づきたいのか。
わからないことは、たくさんある。
ただ、すべてがすとんと腑に落ちたのは、有紗は、そういう子だということと、
私は、これから距離感の取り方を、また考えなければいけないということだ。
私は少し早足で、ひとつ下の階の教室に駆け込んだ。
今日は、来月からはじまる、資格講座のオリエンテーションがある。
すでに、教室には、何人かの生徒が、ぞろぞろと集まりだしていた。
「あ!初音やん!」
流れのままに、プリント配布の列に並んでいると、肩をぱしっと叩かれた。
声の主は、語学の授業で仲良くしていた、涼子だった。
「涼子ちゃん!涼子ちゃんも講座とるの?」
「親が手に職つけろってうるさくて、一応な。
うち、他に知り合いおらんくて、一緒に受けてもいい?」
涼子は、大阪から上京して3年目になった今も、
コテコテの関西弁を喋りこなす。
サバサバとした性格は、剣道部の主将だからなのか、
関西出身のなにわ魂なのか、とにかく授業中も、一緒にいて楽だった。
涼子の言葉に私は笑顔で頷くと、プリントを2人分受け取って、
1番後ろの席に着席した。
「あーただでさえ法学部の勉強ついていかれへんのに、
資格の勉強とか無理やわ」
「私もだよ。すっかり遊びグセつい…」
「お、なんだ初音ちゃんいたんだ。」
私の言葉を遮る声の方を向くと、後ろの扉から、吉野くんが入ってきたところだった。
「わ、吉野くん。」
「人多いな。んじゃ、また」
吉野くんは、私と隣にいた涼子にも軽く会釈すると、
特に言葉を交わすわけでもなく、さっさと前の方に行ってしまった。
「知り合いなん?」
「あ、うん、ゼミの人」
私は涼子に言いながら、ぼんやりと、吉野くんの後ろ姿を見つめていた。
ふとiPhoneを開く。
[LINE 有紗 : てか、吉野と美乃里ちゃん、2人で城崎神社 行くらしい!]
なぜか、ふふっと笑みがこぼれた。
彼が、美乃里ちゃんを誘ったんだろうか。
美乃里ちゃんは、すんなりOKしたのだろうか。
それとも、美乃里ちゃんから…?
まるで後輩の恋愛事情を漏れ聞いてしまったあとのように、
恥ずかしいような、微笑ましいような気持ちになった。
有紗には、もし有紗が本気だとしたら、の話だが、申し訳ない。
でも、私は、彼の後ろ姿を眺めながら、
少し彼のこの先を楽しみにしていたのだった。