コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 君に捧げた初恋 (処女作) ( No.10 )
- 日時: 2015/08/21 11:01
- 名前: 華憐 (ID: m.v883sb)
ブー。ブー。ブー。
枕元に置いたiPhoneが鳴る。
[LINE 有紗 : 初音ー!元気?]
[LINE 有紗 : 今度ね、吉野に、花火しよって誘われたの]
[LINE 有紗 : いらなくなった自転車あげるついでに、どこか行こ…]
通知の浮かぶ画面をザッと目で追って、そのままiPhoneを放り投げた。
このところ、毎日だ。
有紗から、事細かに報告のLINEがくる。
内容は主に、吉野くんのこと。
美乃里とどこに行ったとか、自分が吉野くんと何をしたとか、
ふーん、の一言で片付くようなことが、
彼女いわく「重大ニュース」として届く。
こういう時は、よかったね、でいいのだろうか。
どこに行くの?と聞いた方がいいのだろうか。
それとも、とびきりはしゃいだスタンプを送ればいいのだろうか。
彼女のLINEに、頭を使わずに返信することは、難しかった。
気を損ねないように、それでいて、彼女の期待通りのリアクションをするには、
あらゆることを想像しなければならなかったからだ。
目を閉じて、枕に顔をうずめる。明日はゼミの日だ。
吉野くんと美乃里が親密になってきているのは、
誰の目を見ても明らかだった。
ゼミが始まった当初は口数も少なかった美乃里が、
吉野くんに軽口を叩くようになったことや、
どこかで撮ったのだろう写真を送りあっている姿は
1度や2度遊んだだけの関係には見えなかった。
有紗が「付き合えばいいのにー!」と2人を茶化す裏で、
本当はそれが本心でないのもまた明らかなだけに、
最近ではゼミで顔合わせするのも、少し気が重いのだった。
*
− 翌日
「ねえ、初音にお願いがあるんだけど」
と、突然有紗が切り出したのは、ゼミ終わりの放課後だった。
今日は、たまたま資格講座が休みだったのを、有紗は見計らっていたらしい。
「吉野に、聞いて欲しいことがあるの」
ドキッ…!
まだ何も頼まれていないのに、私はすべてを悟って、胸が鳴るのを抑えた。
そうきたか…。
「吉野、私のことどう思ってるんだろう」
ピンポーン。どこかで予感的中を知らせるベルが鳴った気がした。
「このところね、いろんなところに誘ってくれるのね?
でも、美乃里がいるじゃん、吉野には。
だからなーんかわからなくなっちゃったなーって。」
机に腰かけながら、足をプラプラさせる有紗を、私はなぜか直視できなかった。
「吉野はね、美乃里が好きだと思う。
でも、私には全然美乃里の話してくれないし、
何考えてんのか、わかんないんだよね。
だから、初音にそれとなく聞いて欲しいの」
「聞くって、どうやって…?」
やっとの思いで声を絞り出した。
「LINEとかでさ、どうなの?って。普通に聞いてくれたらいいよ」
有紗が力なく笑う。
私は、改めて、有紗が本気なんだと感じた。
「有紗はどうなの?好きなの?吉野くんのこと」
「んー。付き合ってもいいかな、とは思う。
あ、向こうがもし、って話だけどね」
さらっとそう言いのけた有紗に、思わず「え??」と声を漏らしかけた。
付き合っても…いいかな?
そうか、つまり。
有紗は吉野くんは自分に気があると思ってるし、
もしそうならそれに応えたいということなのか。
めまぐるしく回転する自分の頭を落ち着かせながら、
「機会があれば聞いてみるよ」
と、有紗にそれなりの言葉をかけた。