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Re: 君に捧げた初恋 (処女作) ( No.16 )
日時: 2015/08/24 20:23
名前: 華憐 (ID: m.v883sb)

有紗からの電話から1ヶ月。
相変わらず、何の連絡もないまま、
ただ毎日が淡々と進んでいた。


吉野くんとも、あれから特に言葉を交わすこともなく、
彼から、"聞きたいこと "を聞かれることもなかった。


私の中に当初、芽生えていた使命感のようなものも、
今となっては消え失せていた。


そんなある日—。



「突然、呼び出してごめんなさい」


教授がいつものもったりとした声で
言いながら、席にかけるよう促す。
私は、有紗の件で、教授の研究室に呼ばれていた。


「時間もあまりないことですし、
さっそくですが、本題に入りましょうか。」


そばに置いたノートパソコンの画面をちらっと見ながら、教授が言った。
もうすぐ教科書の執筆期限なのだと、
ぼやいていたのを、なんとなく思い出した。


「野間さんの件ですが、
あなたにはすべて伝えていると、本人からお聞きしているので、
その前提で話させていただきます。」


教授はひとつ咳払いをすると、


「彼女は今、退学を希望しています」

と、さらりと言い切った。



「退学…ですか?」


あっけにとられる私に、教授はゆっくり頷くと

「ひいては、今後のゼミはあなたを中心に活動したいと考えています。
今日はそのお願いで、来ていただきました」

と言った。



うまく、言葉がでなかった。
安易に、わかりました、とも言えないが、
事実が飲み込めないわけでもなかった。


私が何の反応もしないのを見かねたのか、
教授は「まあ急にお願いして、すぐ返事を聞くのもなんなので、
じっくり考えてください」

と、慌てて付け加えると、
もう一度ノートパソコンをちらりと見た。


私は、その様子に黙って会釈をして、
その場を出る以外、何も出来なかった。


誰もいない廊下をぽつり歩く中で、私は、確信した。


有紗は、私を信用してはいなかった。


私は、どこかで思い違いをしていたのかもしれない。
あの日、あの電話をもらった時、
得た使命感のようなもの。
そんなものすら、はじめから存在しなかったのだ。


なぜか心に残る虚しさ。
たまらなく、誰かに、話がしたくなった。

暗い廊下を抜けながら、おもむろにiPhoneの画面を開く。


その瞬間、目に飛び込んだのは


[LINE 吉野結城 : 学校いる?]


ー 彼からのLINEの通知だった。