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Re:    同居人は多重人格。    ( No.3 )
日時: 2015/08/22 00:07
名前: 古森。 ◆3LoRZZ9olU (ID: S6dv/qbT)




  【♯001 初めまして、同居人さん。】



 「優衣さま、おはようございますっ」
 「今日もお綺麗……あ、クラス表見ました?」
 「私、また今年も一緒です! 宜しくお願いします!」



「双葉白琳学園」の、満開に咲いた桜の木に囲まれた校門を潜る。
はらはらと舞い散る桜の花びら。それは、コンクリートや土の上に落ちていって、道にはピンクのカーペットが敷かれている。

斐織財閥の娘の私——斐織 優衣の周りには、数人の女子生徒が集まってきて、口々に話しかけてきた。
私はその数人の女子生徒に、「おはよう」とだけ告げ、にこりと笑顔を振り撒いて天然のカーペットを歩き出す。
それを追いかけてくる女子生徒を見て、私は気づかれないよう、小さく小さく溜め息を漏らした。



 (……今年もまた、面倒になりそう)



私の実の性格は、〝 無愛想 〟に物凄く当てはまる。
ひとと深い関係を築きたくなくて、好きなひとも親友も、あまり作らない。
まあ、一応仲の良い友達はいるのだけれど。

とにかく私は、周りできゃあきゃあわいわい騒がれるのが嫌い……あまり、好きではないのだ。
適当な偽りの笑顔を振り撒いて、取り敢えずその場をやり過ごす感じ。


でもそうしているうちに——私は、今日で高校2年生となった。
入学式からもう1年も、あれでやり過ごせたことが凄い。
なんて、考えてひとりくすりと笑ってしまう。もちろん、気づかれないよう。

まるで雪のように、優しく降る花びら。
風に乗って、色々なひとの制服に模様を描いてゆく。
私の腰まで伸びた黒髪も靡かせて、顔にかかってくる。そんな髪を、そっと左手で抑えたときだった。



 「……この花びら、ずっと付いてるよ」
 「——え?」



いきなり。いきなりだった。
大きくて骨ばった手が、私の髪に付いた花びらを取りながら。
それと一緒に、甘くて、優しくて、少し低くて、透き通るような声が降ってきたのは。