PR
コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 同居人は多重人格。 ( No.4 )
- 日時: 2015/08/22 00:05
- 名前: 古森。 ◆3LoRZZ9olU (ID: S6dv/qbT)
【♯001 初めまして、同居人さん。】
息が、止まりそうになる。
身長が159センチの私に対し、175センチ以上は有りそうなそのひと。
3年生だろうと思われるそのひとが、私に淡く微笑みかける。
横から覗く太陽に頬が明るく照らされて、綺麗な顔立ちに透明感が生まれた。
彼の細い指により、私の髪から取れた花びら。
それを彼は私に見せて、淡い笑顔を崩さないまま話しかけてくる。
「急にごめんね、花びらが気になっちゃってさ」
「あ、いえ。全然大丈夫です、ありがとうございます……」
最後の方まで、きちんと言えなかった。
あまりひとと関わりたくない私は、そのひとから目を逸らす。
でも彼はあまり気にしていないようで、その花びらをブレザーのポケットにしまい込んでいた。
私は俯き加減で小さく会釈をすると、その場を離れようとした。
途中で呼び止められそうだったけれど、友人らしきひとが彼の名前を呼んでいたから。
その声は大きくて、その場を離れ校舎に向かう私の耳にも飛び込んでくる。
「〝 甲斐 〟!」
カイ……はっきりと、そう聞こえた。
でも私には、全く関係のないひとの名前。
この先関わることなど二度と無い、そんな人物の名前なんだ。
「……斐織 優衣、か」
甲斐というそのひとが、私の名を口にする。
でもその声は、桜の吹雪のなかを小走りする私には、届いてこなかった。
PR