コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re:    同居人は多重人格。    ( No.14 )
日時: 2015/08/29 19:22
名前: 古森。 ◆3LoRZZ9olU (ID: .HplywZJ)




  【♯001 初めまして、同居人さん。】



 「……ねえ、何読んでるの?」



真剣に本を読むひかるに、声をかける。
ひかるは黙ったまま本に栞を挟むと、表紙に書いた題名を指でなぞった。
その本は、少し前に上映していた作品で、かなり分厚く難しそうな本。

私は「ふぅん」と興味を示さず、こう言った。
無愛想な私とひかるは似た者同士であり、こういう態度を取られても、何も思わない。
寧ろ、全員がこのひかるや私のような態度であって欲しいと、願うばかりだ。



 「その本、今度貸し——」
 「うん、分かったから。早く席戻れば」



私の言葉を遮って、ひかるは顔も上げずに言う。
その素っ気ない態度に少し苛々が込み上げてくるが、学校な為ぐっと堪える。
私はふぅ、と溜め息を付いた後、「はいはい」とだけ言い残して、席へと向かった。

背凭れに凭れ掛かろうとして、はっとする。
斐織財閥の娘である以上、お父様とお母様に傷を付けることなど許されない。
少し曲げてしまった背をしゃんと伸ばして、私はその席に黙って座っていた。