コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 甘い誘惑 ( No.2 )
- 日時: 2015/08/23 07:22
- 名前: 久遠 ◆rGcG0.UA8k (ID: /005aVGb)
『告白、そして』
結衣side
昨日の放課後、信じられない事が起こった。
それは——人生初の告白をされたのである。
体育館裏に呼び出された時は、ちょっと怖かったりもしたけど……。
そこで待っていたのは小柄な男の子で気が抜けたのを覚えてる。
「よかった、来てくれたんですね!」
私に気づくなり駆け寄ってきて、笑みを見せる姿は例えるなら天使のようで。
こんな子が自分を呼び出すなんて信じられなかった。
「えっと……」
こういう時どう反応すれば分からなくて言い淀む私。
「あ、すみません。自己紹介もまだでしたね——僕は東凛と言います。学年は2年なので後輩ってことになりますね!」
丁寧に教えてくれたおかげで、すんなりと頭に入ってくる。
2年生という事は接点はないはず……だよね?
そうだと思いたい、でなければ全く覚えていないなんて失礼すぎるし。
それにこんな素直で可愛い子忘れるはずないと思うし。
「私は小鳥遊結衣、学年は3年になったばかりです」
緊張からか、ついつい癖で敬語になってしまう。
流石に後輩相手に敬語は——なんて思っていると。
「ふふっ、知ってますよ。そのくらい」
「え」
東くんの言葉に驚いてると、不意に真剣な表情で私の方を見て、
「ずっと、見てましたから」
ずっと? それってどう言う——訪ねる前に東くんは言葉を続けて、
「だから、先輩——僕と付き合って下さい!」
「!!」
これが私と東くんの出会いであり、始まりだった。
その後は流れで付き合うことになって……アドレスと番号交換なんかをして。
今に至る、という訳で。
「夢とかじゃ、ないよね……」
夢幻でない事は誰よりも分かってる。
だけど自分が誰かに好かれていた事に驚きが隠せず、ましてや初対面の人に告白されたのだ。
でも、東くんの方は私のこと知ってるみたいだったし。
「んー」
悩みながら通学路を歩いていると、
「どうかしたんですか? せーんぱいっ?」
「っ〜〜!?」
唐突に耳元で聞こえた声に体がビクっと飛び跳ねる。
「あははっ、そんなに驚きました?」
「あ、東くん……!」
笑みを浮かべる彼の方を振り返り抗議の声を出す。
考えていた本人にいきなり後ろから声を掛けられたら誰だって驚くと思う!
そう思ったものの、口に出して言うほどの勇気はなくムスっとしてみせる。
「怒らないで下さいよー? たまたま先輩見掛けたらつい嬉しくなっちゃっただけなんですから」
……東くんはどうしてこうも平然と、そう言う言葉を言ってしまうのか。
そんなふうに言われたら怒れるはずもない。
「もう……別に怒ってないよ」
「本当ですか?」
「本当だって」
怒ってない事を伝えると、途端に東くんは笑みを浮かべて。
「ならよかったです」
と、満足げに言った。
それを見て、心臓がドクンと高鳴るのを感じて。
「早く行かないと遅刻しちゃうよ」
なんて、分かりきった嘘をつきながら足を早めたのだった。