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ひとつまみの甘さと0.5ビター 1-3 ( No.34 )
日時: 2015/08/24 20:38
名前: 中の人 (ID: 6vxFia0Q)

ひとつまみの甘さと0.5ビター
〜第三話 so アクシデント〜

「失礼します…」

緊張したまんま昨日は眠れなくて今日はかなり寝不足。打ち合わせは2回目なのになんで緊張してるんだろう、監督さんはすごく接しやすい人なのに…。

「おっ、時間ピッタリ」

時計を見て笑う監督さん。
手にはシャープペンシルを持って、黒縁のメガネをかけているからかなり頭がよさげに見える。
そして、か、かっこいい…。

「うんじゃ、入れたいとこまとめてきたかな」
「はい、まとめてきました…!」

抱きしめるシーンは少なくなっても、熱いシーンばっかりで見せるのは少し恥ずかしかったけど、覚悟は決めて今日はここに来たんだ…(やる気)。

「やばいなぁ…」
「…?」

何かまずかっただろうか。

「俺が厳選したとことほぼかぶってる」

ボソッと言う監督さん。
それだけなのにものすごく顔が熱くなる。
それに加えて体が傾く。

「雪さん!?」

人前で寝不足で倒れるなんて恥ずかしいことしたなぁと思いながら意識を失った。


「雪さん!?」

おかしいとは思ってた。
緊張だとしても初回より緊張しすぎなんじゃないのかって。
案の定、俺の目の前で倒れた。

「チッ…」

運良く、サン●イズの社内には学校で言った保健室みたいのがある。
ここで待っとくのもアレだし、とりあえず、連れていくことにした。

「軽っ…」

驚く程軽い雪さんの体を姫抱きしながら運ぶ。
廊下でジロジロ見られたが、そんなのは正直どうだってよかった。
…いつの間にか目で追ってしまっていた彼女。
一大事にならなければ後は噂なりなんなりすればいい…。
それだけだった。

両手が塞がっているのでバァンとドアを足で開けて彼女をベッドに下ろす。
そしてからドアを閉める。

「……」

時計がゆっくり進む音と彼女の寝息しかしないココは居心地が悪かった。
何故か。
答えは簡単だ。

城宮 雪。
彼女のことは前から知っていた。
優れたシナリオライターでいて、ファンに対する態度は口数少ないながら温厚。
それでもって容姿もいい。
アニメ監督として、俺は前から彼女のシナリオでアニメを作りたいと思っていた。
それがやっと叶い、今、目の前に彼女がいる。

そして彼女に実際に会ってみて、素敵だった。
穏やかでしっかり仕事もする。
そんな彼女が気になっていた。
いや、いつしか気になるだけじゃなくて、好きになっていたみたい。
でも、一目惚れとかだっさいなぁと思う俺がいる。
いい大人がなんなんだって話だけど。

「なんかなぁ…」

今ならすぐに手を出せる。
だからといって彼女を傷つけるのだけは…御免だ。

「俺も緊張してあんまし寝てないんだよなぁ」

"俺も"というのは恐らく雪さんも緊張で眠れてないから。
俺の感じてる緊張とは違うと思うけど。
そう思うと急に眠くなってきた。

「少しだけ」

彼女の寝ているベッドに腰掛けて、そのまんま目を閉じる。
自分で思っていたよりもすぐに眠れてしまったのはそれほど寝不足だったからだろうか。