コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

ひとつまみの甘さと0.5ビター 1-6 ( No.48 )
日時: 2015/10/17 22:11
名前: 中の人 (ID: vsc5MjXu)


ひとつまみの甘さと0.5ビター
〜6話 いつも通り〜

あんなことがあったのに次の打ち合わせもそのまた次の打ち合わせもいつも通り。
...なのは監督さんだけ。

あの後、杏羽ちゃんと一緒にお洋服屋さんを回って、いつもは着ないような服を半ば無理矢理選ばされた。
嫌ってわけじゃなかったんだけど、こんなに飾って大丈夫かな...?っていうのは感想。
だって、いつもあまりおしゃれなんてしない人が急におしゃれだなんて...変じゃない?

更には杏羽ちゃんが恋だって言ってきたから私の方が無駄な意識をしすぎて...正直、失敗ばかりしている。
いつもは何気なくかっこいい男性と可愛らしい女性の恋愛シナリオを書いていたけど、現実の恋はここまで大変なものなんだって初めて気づいた。
そして今度からは現実味のある恋愛シナリオを書いてみようかななんてね。

「うーん...と」

いつもと同じ、眼鏡をかけて台本を見ながら悩む監督さんに緊張しまくり。
あぁぁ...ダメダメ。
台本見てもらっている時くらいはきちんとしないと。

「この作品、よくアンケート取ってたよね?」
「はい、取ってます」

アンケートは確かに沢山取っている。
私の勝手な要望でゲームする人達と近い距離にいたいってことで担当さんにはいっつも迷惑かけてる。
...それがどうかしたのかな...?

「そのアンケートって今からとれる?」
「え...?」
「アンケートを元に人気のシュチュエーションを使っていこうかと思ってさ」

おぉ、なるほど!
流石監督さん、頭が上がらないよ、本当に...。

「担当さんに聞いてみますね」

失礼します、と言って携帯電話を取り出し、電話をかける。
そして5分くらい概要を話したりで結果大丈夫ってことになった。
担当さんにも頭が上がらない...。

「よかった」

大丈夫だったことを伝えると柔らかく笑う監督さん。
その笑顔を見て、私もよかったとつい笑顔になる。
この人と仕事が出来て、優しい人が沢山いて。

「じゃ、今日はこのくらいにしようか」

時計を見るともう2時間も打ち合わせをしていたらしい。
人気の監督さんだから仕事が沢山詰まってる筈なのに、申し訳ないなぁ...。
急いで帰る準備をしていると声をかけられた。

「この後、何か予定はある?」

って。

「ありませんけど...」
「よかった」

本日、2回目のよかったが監督さんの口から漏れる。
どういうことだろう...?

「夜、一緒に食べに行かない?」

え、えぇ...え!?
夜、一緒に食べに行かないって、食事に誘われてるってことだよね...?
私が...?

「あ、嫌なら大丈夫だよ」
「い、いえ!行きます!行きたいです!」

つい声を張ってしまう。
目の前でクスクス笑う監督さんを見て、自分が恥ずかしいと思いながらもわくわくした気持ちが大きかった。
まさか誘われるなんて思いもしなかったから。

帰ったら杏羽ちゃんに報告しよう。
やっぱり私は監督さんが好き...なんだな。