コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

ひとつまみの甘さと0.5ビター 1-9 ( No.60 )
日時: 2015/12/14 21:12
名前: 中の人 (ID: qzlbh8SM)

ひとつまみの甘さと0.5ビター
〜第9話 好きの意味〜

「...」
「...」
「黙るなよ、2人とも...」

水をかけられて愛雅先輩は酔いが覚め、湊さんは落ち着いたのか今までの行動にげっそりとしている。
余程の醜態晒しだったみたい...店長さんは毎回って言っていたけど。

「大人気ないなぁ...」
「...るせー」

もう敬語も外して水をかけられた愛雅先輩にタオルを渡す監督さん。
用意周到...女子力高いなぁ。

「ねぇ...僕にもタオル」

ふわふわで少しくせっ毛な湊さんの髪の毛はぺしゃんこになって、眼鏡も濡れたのか外しながらタオルを要求する。
眼鏡のない湊さん...なんか色っぽい。
...って、何考えてるんだ、私!

「お前にはない」
「あっ、私持ってますから!」

バックをあさり、タオルを渡す。
持ってきていてよかった。
ところで監督さんは湊さんが嫌いなのかな...?
やけに扱いが雑な気がするけど...。

「ありがとー、雪さん好きー」
「えっ、あっ、はいぃ!」

好きと言われ、恋愛絡みじゃないのは分かっていてもドキッとする。
心臓に悪いなぁ...。
そして、思わず立ち上がってしまったけど変に注目は浴びたくないからすぐ座る。

「った!」

私が座ったかと思えば、湊さんが悲鳴らしきものを上げる。
どうしたんだろう...?

「悪かったって...」

謝る湊さんの視線を追うと、湊さんを睨みつけている監督さん。
そんなに2人がはしゃいだことが気に食わなかったのかな?
それとも本当に湊さんが嫌いとか...?
訳もなくあたふたし始めると丁度携帯が鳴った。
私の携帯だ。

「すみません、出てきますね」

ガンを飛ばし合っている(というより一方的)監督さんと湊さん、そして項垂れている愛雅先輩に一声かけて席を立つ。
ちゃんと愛雅先輩が「おー」と言ってくれたのが嬉しかった。

「もしもし?」
『雪ちゃん、今、何してた?』

電話の先にはやっぱり杏羽ちゃん。

「監督さん達と飲食店だよ」
『2人きり!?』
「違うよ...」

「監督さんと、監督さんのお友達2人と」と、余計な誤解が生まれる前に言っておく。
そしたら電話ごしに大きなため息が聞こえた。
...別に私は悪くないもん。

『そっかぁ...』
「杏羽ちゃん、何かあったの?」

話を聞くと、杏羽ちゃんの両親が臨時でこっちに来ているらしくて、家に入りづらいみたい。
そういえば、杏羽ちゃん、おじさんおばさんと仲悪かったっけ...。
だから泊めて欲しい。
そんな要件だった。

『もう、急に帰ってくるんだから...』
「じゃあ、私、今から帰ってくるね」

もしかしたら何度でもできるお食事より友人が優先的だ。
しかも杏羽ちゃんは可愛いから、外を歩いてると連れ去られそうだし。

『...ごめんよぉ、雪ちゃん...』

彼女は自分に素直だからこういう時揉めなくて助かる。
会話を終わらせてテーブル戻るとなにやら話し込んでいた。
どうしようか迷ったけど、時間も時間だし、事情を話したら簡単に了解してくれた。
優しいなぁ...。

「金は俺らが払うから、蓮斗は城宮送れよ」
「そんな...!申し訳な「そのつもり」」

私の声を遮って「行こうか?」とテーブルを立つ監督さん。
監督さんにも2人にも申し訳ないけど、食いかかれば面倒って思われそう。

「ありがとうございます!」

先に店から出ている監督さんを追いかける為に少し駆け足になる。
お酒の酔も感じないくらい足取りは軽かった。