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Re: 愛と優しさと罪悪感と。 ( No.4 )
日時: 2015/08/25 17:44
名前: *水沢麻莉衣* (ID: m9NLROFC)


「あっ……、かぐやさんは海は?入りますか?」

「……いえ」

あっ、入んないんだ。
それならーーーーーーー。

少しくらい、れーととの時間をくれても、もらってもいいですか。
このほんの少しの時間をもらってもいいですか。

ほんと…ずるい子じゃんか。
こんな自分が嫌で嫌で仕方ない。

「ルーリ、海入ろうよ。ひとり悲しく入るなんてやだよ」

「もーっ、仕方ないねーあんたはほんと。いいよ。」

れーとは水着ではなく、ズボンをまくっている。
パーカーも七分袖にし、ゆっくりと海に入っていく。
ルリもそれを追うように海に入っていく。

「もーっ!!!」

もっと近くに行きたいよ!
もっともっと……っ!

抱きしめてよ……!
ルリの近くに来てよ……っ。

じゃっぷん!

「……へ」

「……。」

目の前にいたはずの黒髪の男の子は……消えた。
姿を消した。
思わず下をみる。
……あ、ああ……っ!?

「……おまえ、ふざけんなよ」

「うん、だよね。許さないよね」

「当たり前だろ」

私服の彼は……。
申し訳ないが、ルリのせいで、全身ずぶ濡れ状態。

「んの……っ、ルリも来いよ……っ!」

ばーか!
という声が聞こえたと思うと……。

じゃっぷん!

ルリまでずぶ濡れ状態。
こいつ、ルリを海に投げ捨てたな……っ!
んの野郎……っ!!

思わず、ルリはれーとに「おらあああ!!」とバシャアアアッと海の水を飛ばす。
もちろん、れーとがそのままスルーするはずもなく。

「調子のんなよ……っ!」

バシャアアアッ

ルリに水着飛ばす。
ルリもそれを返す。
やり返すのでで終わらない。

どうするの!?これ!
終わりがみえないしっ……!?
ここでルリがやめて、「はーい、これでおわりねー」とか言うと絶対勝ち誇ったみたいに笑うに決まってやがる。
ここで引くわけには……行かない!

「……っ、玲斗……っ」

今にも消えそうな弱々しい声を上げた少女がいる。
後ろを振り向けば……かぐやさんが玲斗を呼んでいた。

「かぐや?どうかした?」

「……玲斗っ……来て欲しいの……」

「うん、いいよ。待って」

「……っ、れーと……」

その声はれーとには……届かない。
れーとはかぐやさんの声しか届いてなかった。
……なぁんだ。
わかってたくせに。
なんでこんなにショックなんだろ……。

「玲斗、何か飲みましょ?私、何か買いに行ってくるから」

「いいよ、かぐやはここに座ってて」

「……一緒にいくから……っ」

れーとは唖然としていた。
そんなに必死になって何を焦ってるの?
焦りたいのはーーールリの方だよ……っ。

「ひとりに……しないで……っ」

「……行こ、かぐや」

かぐやさんはにっこりしてれーとを見上げた。
いいな、あーゆーの。
自然と羨ましくなる自分が嫌になる。
叶わないのに。
見たくない望みが……見えてしまう。

「みりやたん……」

「なにかしら?とりあえず言っておくわ。
ご愁傷様だわ、あんなに見せつけられて。さぞかし悲しいでしょうに」

「心が……こもってないですよ……みりやたん……」

「そう?あ、早いわね。戻ってきたわよ」

ほんとうだ。
戻ってきた。
かぐやさんはれーとの腕を掴んでべったりだ。
なんで……。
わかってるのに……こんな気持ちになるの……。

「かぐや、送ってくね、ミリヤ」

「あら。体調悪そうね」

「ただの……貧血なの……ごめんなさい」

「謝らなくていいから」

優しい声をかけるれーと。
なんで……。
ルリは体調を崩したかぐやさんをいい気味だと思ってしまうの……?
最低だ。
いくら何でも。見損なってしまう。

「ほら、帰るよ」

「嫌っ……!だってっ……。帰ってきたら貴方はっ玲斗はっ……またルリさんといるのでしょう!?
そんなの……っ嫌……っ!」

「かぐや……かぐや……落ち着い……っ」

叫ぶかぐやさんはどんどん息が荒くなる。
……大丈夫なの……?

「好きって言って……っ!愛してるって……っ!そばにいるって……言って!」

れーとは抱きしめる。
ルリのまえで。
ルリの前で、お構いなしに。
ほんとうにルリは……意識されてないんだ。

「好きだよ……愛してるから……そばにいるから……大丈夫だよ……僕は居なくなったりしないから」

「……っ、玲斗っ……!」

しばらくルリはその光景を見ていた。