コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Last Days ( No.2 )
- 日時: 2015/08/28 12:02
- 名前: 久遠 ◆rGcG0.UA8k (ID: 3rAN7p/m)
episode1【型破りな転校生】
栞side
春、それは始まりの季節。そして——恋の季節でもあって。
「今年で最後……」
散り始めた桜の下で呟いた声は誰にも届くことはなくて。
それでも時間だけは無情にも進んで、思い知らされる。
今年で最後——高校生活最後の一年。
その日が等々始まって、思い浮かぶのはずっと大好きな人の顔。
「榊くん……」
榊飛鳥——元生徒会長にして、私が入学してからずっと思い続けてる人。
優しくて、頼りになって真面目で。どんな言葉を並べても足りないくらいに大好きで。
「それも後一年でお終いなんだ」
同じ生徒会に所属して、少しでも長く一緒にいたくて。
誰よりも好きだって言える自信があるのに、告白どころか話しかけることも出来なくて。
せめて最後に何か思い出が作れたらなんて思うけど。
きっとそれすら叶わない。私には自分の意思で何かをするって事が凄く難しいから。
「……教室、行こう」
考える事を一度中断して教室へと向かう。
そして私は出会った——一生懸命でどこまでも真っ直ぐな女の子に。
*
教室に入った私が目にしたのは信じられない光景だった。
「桂くんの事が大好きなの!」
教室の中心で繰り広げられていたのは紛れもない告白。
それだけならまだ驚きは少なかったかもしれない。
でも、女の子が告白した相手は——桂伊織。
この学校の人なら知らない人なんて居ないってほど有名な人。
モデルをやっている桂くんに好意を抱く女の子は凄く多いけど、告白をした子を見るのは初めてだった。
「えっと……ごめん。俺そう言うのは——」
「あ、いきなりこんな事言われたら迷惑だよね……ごめんねっ」
「あっ、待って……!」
桂くんの言葉に傷ついたのか教室を飛び出す女の子。
私はただその様子を見ているしか出来なかったし、クラスメイト達はザワザワと話していたけど。
私にはあの女の子の行動力が少し羨ましく思えた。
純粋に自分の思いをぶつけられる勇気が凄いって思えて不思議と応援したくなって。
気がついたら足が動いていて。
走り去った女の子の後を追いかけていた。
「足早っ……」
すぐに追いかけたがずの背中は瞬く間に遠ざかって。
それでも必死に追いかけて、走って。
やっと追いついたと思った時には息も絶え絶えで、そして。
あの女の子の傍には会長がいた。
その光景を見て思わず隠れる私。
覗き見なんて悪趣味なことしたら駄目だって分かってるのに二人の会話が気になって。
耳をすます自分がいる。
その結果聞こえてきた言葉は——私の予想を遥かに超えるものだった。
「だから僕の彼女としてなら生徒会に入れてあげるって言ってるの」
「は? そんなの絶対嫌!!」
「でも生徒会に入って伊織と長く一緒にいたいんでしょ?」
断片的にしか聞き取れなかったけど、それでも聞き間違いじゃなければ、会長は——
あの子と……? 違う、きっと桂くんを諦めさせようとしてあんな事を言ったんだよ。
そう思うのに、何で胸がこんなに苦しいの……?
「あれ、天海さん? こんな所でどうしたの?」
「っ!!」
不意に掛けられた声に体がビクッと反応して。
慌てて目元を拭うと逃げる様にその場から走り去った。
「ちょっ、天海さん!?」
後ろから桂くんの驚く声が聞こえてきたけど、立ち止まることは出来なかった。
私、何やってるんだろう……。
勝手に人の会話を盗み聞きして傷ついて。
本当に無様だった。こんな顔誰にも見せられない、見せたくない。
桂くんはきっと、あの子のことが気になって追いかけて来たんだよね。
優しい人だから。
「この後、どうしよ……」
今更教室にも戻りづらいし、かと言って早退するわけにも。
……生徒会室で雑務をしてそれから保健室行こう。
そう決めて足を動かした。