コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Last Days ( No.9 )
- 日時: 2015/08/28 23:42
- 名前: 久遠 ◆rGcG0.UA8k (ID: O0NjrVt8)
栞side
二人が去った後の保健室で私は体を震わせた。
「榊くんはやっぱり……」
分かってた、分かってたけど違うって思いたくて、それで目を背けたのに。
聞いてしまった、いけないと思いながらも眠ったままの振りをして二人の会話を。
「……胸が苦しいよっ」
掠れた声に、震える体。
私は失恋したんだと認めるしかなくて、ベットの中で涙を殺して蹲った。
*
それから程なくして保健室のドアがガラリと開く音が聞こえた。
大分落ち着いた私はベットから体を起こして、仕切りのカーテンを開けた。
先生が来たと思って開けた先にいたのは——栗山さんだった。
「あ、えっと……」
目が合うと困った様に言い淀む栗山さんに私の方から歩み寄る。
「どうかしましたか?」
平成を装って声を掛けると、栗山さんはホッとした様に笑顔を浮かべて。
「あの、天海さんですか? 私、生徒会でお世話になる事になったので挨拶に来たんです」
「そうだったんですか……よろしくお願いしますね」
あくまで淡々と普通に、それを意識して言葉を紡いで。
だけど心は荒れたままで、栗山さんの姿を見たとき、どうして貴女なのって思ってしまった。
少し前までは、あんなに仲良くなりたいって思っていたのに。
今はこんな気持ちになるなんて、どうして私はこんなに勝手なんだろう。
「はい! あの、顔色悪いですけど平気ですか?」
言いながら栗山さんは私の額に手を当てて、
「熱はないみたい。でも気分悪そうだし、うーん」
真剣に心配してくれていた。
たったそれだけだったけど、栗山さんが優しい人なのが伝わってきて。
こんな身勝手な気持ちのまま接してるのが辛くて。
「っ、めんなさい……ごめんなさい」
「え!? 天海さんどうしたの? やっぱり馴れ馴れしかったかな!?」
突然泣き出した私に栗山さんは、ずっと付き添ってくれて泣き止むまで待ってくれた。
「どう? 落ち着いた……?」
「はい、あの驚かせてすみません」
「全然大丈夫だよ! 栞が落ち着いたみたいでよかった〜」
「!」
今、名前で呼んでくれた?
「あ、嫌だった?」
「嫌、じゃないです。あの、私も優月ちゃん……と呼んでもいいですか?」
「もちろん! 大歓迎だよっ」
思い切って告げた言葉に、優月ちゃんは太陽のような笑顔を見せてくれて。
私までつられる様に笑顔になれた。
話してみて分かった気がする、榊くんが優月ちゃんを好きになったのも。
桂くんが優月ちゃんに惹かれるのも。
だから決めたんだ、私は自分の気持ちを抑えて見守ろうって。
それがきっと一番いいんだって……そう思えたから。