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Re: 勇者様は今日も外道です。 ( No.5 )
日時: 2015/09/01 22:30
名前: Kudodai ◆pc86zgVlF2 (ID: RA5yJQnZ)
参照: 最後の方少し適当かもです……

第1章 第2話 

と、思った矢先でした。
式典会場近くの人気の無い場所で2人の男の人が何やら言い争いをしていたのです。

「おいコラ、テメェ何見てんだァオイ!ブッ殺すぞ!!」
「いえ、全く見てないですが」


絡んでいる側の人は、とても背が高く力も強そう。
一方絡まれている側の人は細身でメガネをかけていました。
失礼ですが、余り強そうには見えません。

「何だその態度はァ!? どうなるか分かってんだろうなおい!」

「見てないって言っただけじゃないですか?」

どうやら、細身の彼がガタイの良い男にぶつかった、と男が彼に言いがかり? をつけたみたいです。
面倒くさいといった顔で、彼は男を見つめていました。
その時、男が彼を物凄い勢いで殴ったのです。

「テメェが調子乗った態度でうぜェからよォ! もう一発殴ってやろうかァ?」

大変だ。私が止めなきゃ。
治癒術士の私は頼りないかもしれないけど、これでも新しい勇者様御一行の一員だ。
……でも、その必要は無かったみたいです。
彼はさっきと変わらない顔で男を見続けました。

「何だてめェ、しぶとい奴だな……、もう一回殴られてェのかァ?」

「いえ、その必要は無いみたいです。貴方は僕を怒らせたので」

「ハァ? 何言ってんだテメェ」

そう男が言っている間に、彼の足下には魔法陣が展開されました。
大きな魔力が宿っています。相当な腕の持ち主でした。
だけど、人が余りいないとはいえ、この魔力でで魔法を放ったら、大きな被害が出るのは間違いないです。

「危な……」

私がそう言って走り出した時には遅かった。

「貴方が非を認めるまで許しませんよ」

彼は魔法の詠唱に入ってしまったのです。
どうしよう、もう止められない……!

「ニャクロ=サモン。蝕め」

そう言うと、黒いうねうねとした物体が男めがけて飛びかかりました。
その物体は彼の身体中にまとわりついて動きません。
しかし、男には明らかに変化が見えました。

「何だァ! 痛ェ! うぁぁ……!」

どうやらあの物体が男に何かしているのは間違いありません。
彼は男を見て、冷たく言い放ちました。

「このままだと貴方はいずれ死にます。貴方に僕がぶつかってない事と、自分が悪いという事を言えばその呪文は解ける様になっています。自分のプライドをとるか、生命をとるか。決めてください」

それを聞いて男は、よほど辛かったのか、すぐに大声で叫びました。

「わ……悪かった! 俺が悪かった!! お前は俺にぶつかってもいない!」

そう言うと、物体はまたニュルニュルと、彼の元へ戻り、消えた様です。
男は、何も言わず走って逃げ出してしまいました。

私は彼のもとへ走りました。
すると彼は私に気付き、バツが悪そうに言いました。

「あ、見られていましたか……。ここまでやるつもりは無かったのですが……」

明らかに年下であろう私にもすごく丁寧な口調でした。
その後、彼は続けて言ったのです。

「実は僕、今度の勇者一行の一人なんです。ここで、魔法を使って男を痛めつけた……なんて聞かれたら……。すみません、見逃していただけませんか?」

この人も……、勇者様御一行の一人なんだ……!
私は嬉しくなって言いました。

「……勿論です! というか実は、わ……私も! 勇者様のお供にならせていただく一人なんです!」

それを聞いて、彼は驚いた表情で私を見つめました。
勇者様御一行の名前は発表されているのに何で私達はお互いに知らないのか。
それは、勇者様御一行に選ばれた4人は、お互いに当日まで名前しか分からない様に情報を遮断されています。
何故そんな事をするか分かりませんが……、国王の遊び心でしょうか?


それはさておいて、驚いた様子の彼は言いました。

「貴方もだったのですね!」

「杖、を持っているという事は、貴方がレシェス・セイリス・マリンさんでしょうか?」

彼は装備から私の名前を当てた。
彼は……、さっきの魔法から召喚士だと伺える。

「正解です! そういう貴方は、ヴァン・クロニカさんですか?」

彼……ヴァン・クロニカさんは微笑んで答えました。

「はい、いかにも僕がそうです。よろしくお願いしますね! ヴァンと呼んでください」

「よろしくお願いします、ヴァン! 私はマリンって呼んでください!」


こうして私は、最初の仲間、ヴァンと出会えました。
他の仲間の方もきっと良い人なんだろうな。
あっ……と、式典が始まるみたいです。
私は他の仲間の方達と勇者様に期待を抱いて、開会式を待ちました。