コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: ムニキス【リメイク】 ( No.2 )
日時: 2015/09/10 23:17
名前: はるたろう (ID: eOcocrd4)


何度続くのだろう

ぼやけた視界を頼りに歩く、まだ元気な自分の体を呪った。相変わらず、永の眠りにつかない。いや、永というのは間違っているかもしれない。終末になれば皆眠りから覚めるのだ。そして審判を待つ。

パン屋を安月給で手伝いしているぼろ切れのような自分だが、昔は王家に仕える名門の家系だったのである。今ではすっかり、村のどこよりも貧乏だ。なにしろ親がいないのだから。養う金は自分で得なくてはならない。

「ジジだっけ」
「………はい…」
「辛い?」
「いいえ」
「そう」

イエスかノーか答えないか。

店主からの教えで、それしか言わない。ジジはほこりまみれの髪を振って、足元の箒へと落とした。思ったよりも降り積もる。水をくみに行ったときの土埃も混じっていた。

「ねえ」
「はい」
「前から言ってるけど…友達になれないか…な?」
「…………」

彼女の発言は善だった。善の向こうに見える、ガラス窓にうつった、ジジをいじめるいつもの集団が石を構えていた。関係のない彼女をだしにして、きっと自分を苛めるのだろう。そう悟る。

「答えてくれないか…」悲しそうな声に、身を強張らせた。彼女が去ったあと、また今日も繰り返されるのだろう。不幸にも雨上がりだった、店先の溝を見て思った。メニューはきっとこうだ。泥水に顔を何度もつけられて、蹴りをいれられる。細い木の棒は鞭のようにしなり、自分の体にあたるのだろう。

震えていたのか、彼女は心配そうな目でジジを見つめる。エメラルドのように輝く瞳から、視線をそらすことは躊躇われる。

「……私ねえ、魔法使いになりたいんだ…君は?」

答えられない。違う。答えることができない。なぜ気付かない、幾度となく返事をしてきたのに気づくことがないのか。

「…そっか」
「はい」

突飛な発言を恥じたのか、以降、彼女は口を開かなかった。うつむいて、店主が帰ってくるまで店のなかにいた。評判は悪い女の子らしい。何しろ、禁止されている障害について調べているそうだ。

障害を持つ者は多からず、少なからず、身体能力や頭脳面で常人よりも上をいくものがいるらしい。その一つが魔法であった。
だから、魔法使いになりたい彼女は調べているのだろうか。国の上に知られれば、即処刑であるというのに。