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Re: ムニキス【リメイク】 ( No.3 )
日時: 2015/09/12 18:21
名前: はるたろう (ID: ak9ikTR3)


垂らした余分な脂肪が、肩に重そうな、寝転ぶ女をレンツォは邪魔そうにどかし、今では珍しい携帯電話に手を伸ばした。女はベッドから転げ落ちる。

「…もしもーし、ナディア?ニコ呼んで。うん。終わったから」

寝息をたてない女はマネキンのようだ。先程まで淫らに喘いでいたのにだ。違う針が刺さればすぐだった。呆気ない。

驚くことなかれ、男娼の彼だがヒットマンでもある、今は無き国家軍隊の指揮官でもあったのだ。客をとる上で、その事は黙っている。しかし、今回のようなときは別だ。マネキンは敵国の情報源とも言える女だったのだから、吐いたあとは殺すのが筋だろう。

冷酷な事を述べているが、内心、穏やかではない。

『……やはり、ムニキス…の仕業か?』

この名を口に出すのは少々照れるが…レンツォの職業よりも恐ろしい、敵国の攻撃方法だ。知っておかなくてはならない。なぜなら、この先、脅威となるだろうからだ。

「途切れ途切れに言ってたよ」冷たい手を自分の顔に寄せて軽くキスをした。携帯電話の奥では、ニコラウスが静かに苛立っている。かれこれ三週間は帰っていないからだろうか。「女は裸にならないと」弾んだ声でレンツォは言う。

『そうか、ならよい』
「あーッ!!待って、アルに言っといて!俺が元気だって!」
『…了解した。なるべく早く帰れ、この地域でも発生した、訊問を受けているガキが居てな……ガキのことはガキに委せるがよかろうて』
「ん…んん?ガキって俺のこと…いてっ!ちょ、いきなりきんなよ、耳いてー」

一人言を呟き、女を窓の外から放り投げた。何者かが、待ち構えていたかのように女を荷台に乗せてウィンクする。「せんきゅッ!」とどなり、投げキッスをレンツォにした。

ムニキスとな、無に還すというところから来ている。つまり、土地をまっさらにかえすということだ。
生きとし生けるものは全て亡くなり、建物までもが無くなる。

「まったく、やめて欲しいね……」呟くと、シャワー室へと向かった。