コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ムニキス【リメイク】 ( No.7 )
- 日時: 2015/09/24 20:10
- 名前: はるたろう (ID: .rBrFMf.)
目の下に大きな手形をつけたレンツォをかつぎ、アクセルはある市場へと向かっていた。
あると言っても職業柄、娼婦や奴隷の並ぶ昔の法では裁かれていた市場へだ。レンツォもそこの出身。奴隷兵として支配国の戦争に出ていた時代、金がつきたために売られ、そこから男娼の道を歩んでいくことに。
ちょっと言えないルートで、ちょっと言えないお仕事をした…と、この前語っていた。まあ、少年愛も珍しくない文化だ。中身はあれだが、外見だけが売りのレンツォにもってこいの仕事だったという。
目の覚めたレンツォは、まず地面の遠さに驚いた。黙って少し泣いたがアクセルの肩の上だと分かると、急にバタバタと動き始め、胎児の如く、外側からだがアクセルの腹を蹴り続ける。
「かってえ…もう治ったのかよ。ってことは、俺、一時間も寝てたの?!」
「……薬使いやがって…苦労したぜ。俺の仕事、手伝ってもらうぞ」
「えーやだやだー、帰りたあーい…あ、ここ柔け」
「尻を揉むんじゃねえ!!」
流石に怒ったアクセルは、コンクリートの床へとレンツォを投げた。短い悲鳴をあげてその場に倒れる姿を見下ろすと、鼻を鳴らして市場へと入る。
兵士の士気をあげるために娼婦を雇う軍は多くないときく。そのような仕事に関わる人物がいるのは入り口の辺り。アクセルの知り合いは少ないが、レンツォは出入りをしているので家族同然の人々が並んでいた。
声をかけてくる女、ひとりひとりにレンツォは博愛に満ちた愛想を振り撒き、横で歩く巨漢の事を小突いてみたりもしてみせる。即座に成敗されてしまったが。
少々正常さに欠けた通りだが、この空気を好む者も多い。BGMは女の猫なで声だが、談笑する者達が好んで飲む、インスタントコーヒーとコーラを割った飲み物。その臭いを近くで嗅ぐことが好きだった。珈琲の深みとコーラの甘い臭い。飲んだことは無いが、一度は口にしてみたいものだ。
奥に進むと、ここから先はアクセルの知り合いの方が多くなっていく。歳のいった、自分の縄張りを持つ男達の中でやっていく自信のあるアクセルだ。そこらへんは見習わなくてはならない。
「……おお、アクセル」
「すまんな急に呼び出して…」話し込んでいた初老の男、二人が飛び出した。レンツォの顔を怪訝な面持ちで睨み付けていたが、すぐに話に戻っていく。
「エドさんの頼みだ。して、俺に任せたいことって?」
「…まあ見てくれば分かるよ。俺たちも、新しいガキを引き取るのは少々ねえ……」横目で顔を見合わせる二人の後ろで、大きな物音が聞こえた。
何事か、二人は建物の奥へと走って消えていく。そのあとへレンツォ達も続いた。