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Re: ムニキス【リメイク】 ( No.8 )
日時: 2015/09/24 20:14
名前: はるたろう (ID: 0nxNeEFs)




自分をいじめていたとは言えど、町の皆はどこに消えたのだろう。あの少女は今頃、何をしているのだろうか。曇った窓から見える美しい月に問いかけようが、答えはなしだった。

レンツォの部屋は埃ひとつと無くなっている。アルフォンス様とやらの部屋は…どうだ。まるで時間が進まないような部屋だ。掃いても掃いてもきりがない。埃が元にあった場所に、掃いた事実があっても、また元に戻っているのであるかのようだが、それだけ汚れているだけであるが。

「…これからどうなるのだろうか……おお?なにこれ、こんなものあったかなあ……不思議じゃないよね。この部屋なら…」

写真がいつの間にか、ブーツの中に入っていた。手に取ってみると、親子三人が笑って座る、色あせた写真ということが分かる。所々が赤く錆び、かどが丸くなっているが、保存状態が良かったのだろう。撮影日はおそらく西暦二千……あとは分かっていない。
子供を抱き、微笑む母親と父親は幸せに満ちて溢れた顔だ。パン生地のようなふわふわの子供に与える愛は、それよりも柔らかいものなのだろう。

「……母さん……父さん…」

思い出せば、自分の父と母はどうなってしまったのか。

「センチメンタルな気分に浸っているのに、すまないね。ちょっとどいてくれないかな…」
「はっ!?センチメンタ…何を言うんですか!?」
「いや、センチメンタルじゃん。てか知ってるゥ?センチメンタルジャーニーって。伊代ちゃん可愛かったなあ…」

いきなり何を言い出すか。暗くて見えにくいが、声からしてまだ子供のようだ。

「知らないよねえ…なんせ六千年も前の話だからなあ……あ、どきたまへどきたまへぇ〜」首をひねらせる言葉を呟いた。

やっと月明かりで分かった子供の正体に、ジジは目を大きく開いた。
写真に映るあの子供。西暦二千年の時代ともなれば、いまから約五千年前かそれ以上か。
生きている筈がない。五千年前もの人間が、もしかしたら彼の子孫なのだろう。そうとしか信じられなかった。

気味の悪い脂汗をかいた。ジジが震えた手で写真を自分のズボンにしまう。少年は悠々とした態度で、ジジの前に手をさしのべた。一体何が始まるのだろうか。センチメンタルな気分はもう無い。

「僕はアルフォンス。アルフォンス・グッドマンだ。極東の方で流行ったアニメーションにそんな姓の子がいたねえ…ううむ、懐かしい」

思出話を語る老人のように遠い目をしている。握手と言う意味か、この手は。