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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 君 と い う 名 の 海 に 溺 れ て く 。 ( No.2 )
- 日時: 2015/09/12 19:57
- 名前: 羽海 . ◆vLMSJh5x/Q (ID: UIcegVGm)
> 第1章 恋 を し た 。
最初彼女を見たとき、硝子のようだと思った。
触った瞬間に砕けてしまう程に繊細な、透き通るように綺麗な彼女。
人魚姫のように、泡となり消えてしまいそうな程に儚く美しい彼女。
僕は、この人に恋をした。
僕は、この人を〝大切にする〟と誓った。
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最初彼を見たとき、プラスチックだと思った。
何事も大雑把で、元気だけが取り柄で、まるで犬のようにはしゃぐ彼。
失敗したらそれを悔やんで、でもそこで諦めたりしない、前向きな彼。
私は、この人に決めた。
私は、この人を〝ターゲット〟にした。
- Re: 君 と い う 名 の 海 に 溺 れ て く 。 ( No.3 )
- 日時: 2015/09/12 20:20
- 名前: 羽海 . ◆vLMSJh5x/Q (ID: UIcegVGm)
> 第1章 恋 を し た 。
暖かな光が、アスファルトを蹴り上げ走る俺に降り注ぐ。
4月7日の今日。人生で一度しかない、高校の入学式の日だ。
中学の頃と変わらず学ランを着て、エナメルバッグを肩に全力疾走する俺は、稲葉 歩という。
元気なところと前向きなところだけが特徴の……犬系男子、らしい。
犬系男子って何なんだ、なんて考えていた中学の頃の俺を思い浮かべると、笑えてきてしまう。
「どんな高校生活に、なんのかなー」
ふと、今咄嗟に思い付いた言葉を口にしてみる。
ニッと口元を上げて、エナメルバッグを掛け直した。
走り続ける真っ白のスニーカーに運ばれるがままに、第1志望であった「碧葉高校」へと向かう。
- Re: 君 と い う 名 の 海 に 溺 れ て く 。 ( No.4 )
- 日時: 2015/09/13 12:06
- 名前: 羽海 . ◆vLMSJh5x/Q (ID: .g3iy5Ut)
> 第1章 恋 を し た 。
走り続けて約十数分。
漸く、「碧葉高校 入学式」と書かれた板が置かれた正門が見えてくる。
正門の周りには、満開に咲いて枝がピンクに染められた、大きな桜の木が数本。
その下のコンクリートや土の上は、花弁の為ピンクの絨毯が敷かれていた。
正門を潜った後の生徒の胸元には、花飾りが付けてある。
きっと、花飾りを付ける係りである先輩に、付けてもらったのだろう。
そう考えていると、後ろから優しく肩をつつかれた。
「君、1年だよね。花飾り付けなきゃ」
「へ? あ、ありがとうございまー……」
可愛らしい声に振り向くと、言葉が途切れた。
サラサラのショートカットの髪が、春風に靡いて。
眉毛辺りまでの長さに揃えられた前髪。そこから覗く、大きな瞳が印象的だ。
華奢な身体で、俺より低い身長の小柄な彼女。
柔らかな風が吹くなか。
細い指で学ランに花飾りを付ける、透明感溢れる彼女に、俺は————
恋 を し た 。
- Re: 君 と い う 名 の 海 に 溺 れ て く 。 ( No.5 )
- 日時: 2015/09/13 15:29
- 名前: 羽海 . ◆vLMSJh5x/Q (ID: UIcegVGm)
> 第2章 海 に 呑 ま れ た 。
暫く俺は、息をすることが出来なかったかもしれない。
目の前にいる彼女から、ふわりと良い香りがする度に、心臓がどきんと跳ねる。
15年間の間、異性に対してこんな気持ちになったことなどないのに。ましてや、今日出逢ったばかりの彼女に。
なんて、ぼーっとしていると、彼女に声をかけられた。
「よし、ばっちり!」
「あ、ありがとうございます!」
「いいえー。じゃあ、入学式頑張ってね」
彼女は俺の花飾りを、ぽんぽんと撫でると。
花飾りよりも綺麗な笑顔を咲かせ、くるりと向きを変えて違う新入生に走って行った。
去り際に目に付いた、彼女の首から下げた高級そうなネックレスが、あの可愛らしい仕草が、声が、笑顔が。
————頭から、離れない。
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