コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: いつか始まりの魔法世界 ( No.4 )
- 日時: 2015/09/22 17:10
- 名前: 九尾桜花 (ID: btNSvKir)
第一話 次に来るのは何か——咲花は迷う
「ん、んぅ……、ここは?」
目覚めた場所は、そこそこ綺麗なビジネスホテルのような、そんな場所のベットの上だった。
『世界政府機関です。皆さん、転送お疲れさまでした。ここは、世界政府機関が作りだした異世界——魔法世界ミクロス——です』
アナウンスの声が変わった。さっきの声——と言っても、あれからどのくらい時間が経っているのか、私には分からないが——とは、少し、トーンが違う。
『この世界には、あなた方、地球人のほかに、先住民族のような方々がいらっしゃいます。世界政府機関は、情報を我々から伝えるだけではなく、そのような方々から教わる方が良いのではないか、と考えています』
「なんだ、それ?」
先住民族とは、なんぞや? という思いが思考を支配する。先住民族→インディアンが、いち早く成り立つ。
『先住民族といっても、普通の人間です。この世界は、魔法があります。世界政府機関は、その方々にここで、生きていくすべを教えてもらってほしいのです』
なんだ、普通の人間なのか。内心ほっとする。言葉の分からない人とかだったら嫌だなぁ、と思っていたからだ。
『世界政府機関としてのお知らせは以上になります。その他、分からない事がありましたら、机の上に置いてある、水晶をお使いください』
そこで、プツっとアナウンスが切れた。このアナウンスは、人類全員が付けている通信機器——SF(スフ)——と呼ばれるものからだった。私は、それを少しいじる。
だめだ、全く反応しない。
「諦めるか」
世界政府機関に逆らえるはずもない。逆らって、良い目にあった人を少なくとも、私は知らない。
とりあえず、ベットから起き上がる。いつまでも寝ているわけにはいかない。
ふと、鏡が目に入った。
「え、何……これ」
鏡に映っていたのは、黒髪黒眼どちらかというと普通の人といった感じの私
——では無かった。
蒼い頭髪、月夜の空のような藍色の瞳、しかし顔立ちはそのまま。なんともおかしくなってしまったような、自分の姿だった。
「わかんない……、マジで分かんなくなってきた。そもそも、ここは何なの? 世界政府機関は、魔法世界とか言ってたけど」
仕方なく、部屋の中にあった机から水晶であろうものを手に取る。
形は、旧文明で使われていたという「スマートフォン」のようなものだった。
表面に手をかざすと光と共に文字が浮かび上がる。
【ようこそ、ミクロスへ——霧島咲花——さん
ここでは、この世界での悩みを解決させていただきます】
「解決って言われてもなぁ……。あ、元の世界への帰り方、とか」
水晶を見ていると、【地球への帰り方】という項目があった。
そこをタップする。
【地球への帰り方ですが、今のところ、いえ、これからも一生ないとお考えください。世界政府機関は、あなた方を地球に戻そうとは考えていません。
この世界での生活をエンジョイしましょう♪】
そんなのって、軽く絶望してしまう。
本当に、なんでだろう。普通に、学校行って、ご飯食べて。それだけだってのに。
「分からない事が、多すぎる。とりあえず、外に出るしかないかな」
部屋を見まわすと、私が持っていた学生鞄が隅っこのほうに立てかけてあった。制服のポケットから髪をしばるためにゴムを取り出す。
いつもはしばらない髪の毛だが、なぜか今日はしばりたかった。
腰まで届くほどの長い髪が揺れると、目に見慣れない色が映ってしまう。現実を逃避するためかもしれない。
高い位置でポニーテールにすると、立てかけてあった学生鞄を手に取る。他には何もない、寂しい部屋だがこの世界に来て初めての場所だ。
部屋から出るのはなぜか怖い気もする。
それでも、迷ってはいられない。
ドアノブに手を伸ばし、ガチャリ、と扉が開く。
魔法世界というくらいだ。地球とは違う事が多そうだ。そんな中で、 私は上手に生きていけるのだろうか。
不安でいっぱいだが、一歩を踏み出した。