コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: いつか始まりの魔法世界 ( No.5 )
- 日時: 2015/09/13 14:23
- 名前: 九尾桜花 (ID: btNSvKir)
第黒話 世界政府機関は何を狙う——二瑚は異世界へと送られる
「二瑚、今日はあなたのアナウンスの日ね」
「はい、いよいよ今日です」
あたしは、二瑚。世界政府機関アナウンス部所属のアナウンサーをしている。
世界政府機関は、今日、数百年前からの計画——異世界移住計画——を発表、実行するようだった。
何もかもが突然で、世界政府機関の凄さが身にしみて分かる。
この事を知っているのは、機関でも一部の人間だけ。あたしと上司の璃緋都(りひと)さん、それと幹部の人達。あと、各国の首脳たちには伝達がいっているそうだ。
「でも、二瑚。本当によかったの? 向こうで、移住して機関に従順してしまって」
「従順なんて。そんなこと、璃緋都さんが言っちゃだめですよ。だって……」
「だってじゃないのよ。この計画については、結構不審なうわさがたってる」
「それでも。行くって決めましたから」
「それならいいんだけど」
璃緋都さんの顔が悲しそうに歪む。それは、あたしを憐れんでいるからだろうか。
確かに、あたしはまだ16歳で普通なら高校に通っているような歳だろう。だけどここで働いているのは身寄りがなかったあたしを拾ってくれたのが機関だったから。
しかたない。璃緋都さんには言えないが、あたしは半分脅されている。
機関は、あたしに対して命令を下したのだ。それに逆らうのがどういうことか。この世界では、生きていけない。死と同義だ。
璃緋都さんは、飲んでいたコーヒーをテーブルに置くと、「そろそろ仕事だわ」と立った。
「なんか、すみませんでした。いろいろと心配かけて」
にこりと微笑んで、お辞儀する。
すると璃緋都さんはあたしをぎゅっと抱きしめた。
「二瑚……、ここでの生活はきっと、つらい事がいっぱいあったでしょう。向こうの世界へ行ったら、自由に生きてほしい」
「そ、そんな……」
監視カメラに見えない様にあたしにメモをくれた。
「向こうに行ったら、ここへ行きなさい」
「でも、仕事は、どう、すれば」
「大丈夫。一番最初のアナウンスをすれば、世界政府機関は我々アナウンス部を解体するはず。そうしたら、ここへ行くの」
璃緋都さんは、ぱっと体を離す。
「どんな事が向こうで起こるかは、分からないけど、それだけは信用してもいいわ。わたしが保証する」
「はい、本当に、ありがとうございました」
そのままあたしに背を向けると、手を振って自分の持ち場へと向かっていった。
そっと、メモを開く。
【ミクロス、王都レパレル グレルフ学園 ここに、わたしの知り合いがいるはずよ。
わたしの名前を出せば、とうしてもらえるわ】
「璃緋都さん、何から何まで……」
メモを閉じると服のポケットに忍び込ませる。
そろそろあたしも集合場所に向かわないと。
魔法世界ミクロスにいって初めのアナウンスはあたしの仕事だ。
不安はまだ、心に残っているけど。
少しでも、生きるために。 そして、世界政府機関に————。