コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: いつか始まりの魔法世界 ( No.6 )
- 日時: 2015/09/20 11:19
- 名前: 九尾桜花 (ID: btNSvKir)
第二話 輝きと闇とこの世界に——咲花は知る
部屋を出るとそこは普通の廊下だった。 ただ、人はいない。
そもそも、ここは魔法世界のどこら辺に位置するのか。まず、それが分からない。
水晶の項目——地図——をタップする。
【現在地・イヴァン王国首都クロフォール、貴族ノ館】
「どうしてこうなったッ」
貴族ノ館とか、どうしてこんなところに転送してくれたものか。
明らかに高貴な身分の人がいそうな場所じゃないか。
地球での生活水準がそこまで高くなかった、現役JK16歳の咲花ちゃんにはいまだかつてない試練ではないか。
まぁ、それでもこんなところにいつまでもいていい訳ではない。そう判断した私は、とりあえず、廊下を進んでみる。
「あああああああああああああああああ!! どうして、広い場所につかないんだぁぁぁ!!」
思わず絶叫。 あ、そういえばここ貴族ノ館とかいうやばそうな場所だったわー、と気付いた時には、もう遅かった。
「何者!!」
どこからともなく、騎士風の人が出てくる。顔が仮面で隠れている為どんな事を考えているか、表情から読み取ることはできない。
わぁお、さすが魔法世界。なんでもありかよ。
「貴様、ここが最高貴族クラウス様の屋敷と知っての愚行か!!」
「え、や、その……、なんていうか……」
騎士風の人は、腰に下げていた細身の剣を抜くと、その先を首元に突き付けた。
「なんとか言え! 女!」
「まず、そのクラウス様って、何ですか……」
自分に突き付けられた剣が怖くて、語尾が小さくなってしまう。うぅ、情けない。
騎士風の人は、呆れたような顔をして、なにかぶつぶつと呟いている。
「そういうことか……。おい、貴様手を貸せ」
「ふえ!? って」
強引に手を掴まれる。 く、私に何をするつもりなのだろうか。
「逃げようとするなよ? 大丈夫だ、命はとらない」
騎士風がそういうと、一瞬で光に包まれる。
一回体験した事のある浮遊感。
次の瞬間————
————景色が変わった。
ぱぁっと、光が散って部屋の内装が見えてくる。
何とも言えない高そうな机、ソファ、カーペット。
落ち着いた茶色系で統一された壁や天井。
「こ、ここ、は……」
突然こんなところに連れてこられて、ちょっときょどっている私。
もしかして、これが、魔法!?
ってことは、ここに連れてこられた方法も魔法なのか……、果たしてどうなのだろう。
私が、挙動不審になっていると、騎士風が跪いた。
「陛下、例の者を連れて参りました」
「はい、御苦労」
見た目は、優しそうなおにいさん。雰囲気は、屈強な戦士。 わぁ、きっとこの人強い人だぁ〜。
「そこのお嬢さん、大丈夫でしたか?」
「え、ええ」
「突然こんなところに、訳のわからない男に連れてこられて、怖かったですよね」
「や、陛下、別に俺は」
「いや、お前のことだから『何者!! ここが最高貴族クラウス様の屋敷と知っての愚行か!!』とかいったんじゃないのか?」
「う…………」
陛下、と呼ばれた人は「やっぱり」と、にやりと笑う。
「えっと、あなた方は……?」
私が尋ねると、騎士風が立ち自己紹介する。
「俺の名前は、グレル・アキメス。イヴァン王国近衛騎士団副団長だ」
グレル、という名前らしい騎士風は仮面を外す。
「え、若っ」
歳はおそらく私より少し年上か同じくらい。ってことは、15か16歳?
「こいつ、若いですよね。うんうん。でも、強いですよ〜」
「あなただけには言われたくありません。イヴァン王国国王にして、この国最強の称号を持つあなたには」
「それって……」
「お嬢さん、申し遅れました。僕の名前はリメル・N・イヴァン、この国の国王をやっています」
- Re: いつか始まりの魔法世界 ( No.7 )
- 日時: 2015/09/21 23:02
- 名前: 九尾桜花 (ID: btNSvKir)
「…………へ?…………」
突然、僕が国王です発言されて驚いて口をパクパクさせいると、王様はその表情を見てたまらず笑いだす。
「いやー、面白い。面白いよ、お嬢さん。くくくッ」
「陛下、真面目に話を進めてください」
グレルは、頭を押さえる。うん、騎士風も苦労が多そう。
「くく、ひぃ、そうだったね。お嬢さんにはいくつか聞かなきゃいけない事があるんだ」
「え、聞かなきゃいけない事……?」
「そう、まず一つ目。あなたの名前は?」
「霧島、咲花です」
自分の名前はちゃんと大きな声で、自信を持って言うのよ——昔母が言っていた事を思い出し、はっきりと」、大きな声で名前を言う。
「キリシマ・サキカ? 不思議な名前だな。もしかして、日ノ国みたいな感じなのか」
「じゃあ、サキカちゃんね。名前もわかったことで次、何歳?」
「えっと、今年で16歳です」
「なぁんだ、グレルと同い年なのかぁ。ってことは学園に……」
国王は、ぶつぶつ言いながら手元の紙にメモをとっている。
その後も、いくつかの質問を受けた。その髪はいつからそんな色なの、とか、ここがどこの国か知ってる?、とか、そのほかにも沢山。
「じゃあ、これで最後にするね」
優しく微笑みかけてくる。
「サキカちゃんは、世界政府機関って知ってるかな?」
「————っ!!」
まさか、この世界にも、あの、機関が、あるっていうのか。
「は、い。知って、います。あの機関が、私を、ここに送りつけてきた、張本人ですから」
私の言葉に、視線を交わす二人。
二人には、これまでの質問で「もともと、この世界の人間ではない」ことを伝えていた。
信じてもらえるかどうかは、別として。
「うん、ありがとう。これで、君の今までの言葉を信じることが出来るよ」
「まさか、本当だったとはな」
二人とも、驚きを隠せないようだった。
「それじゃあ、いろいろと教えるよ。この世界のこと、この国のこと、そして」
手元にある、資料をかざす。そこには、大きく機密事項、と書かれている。
「————この世界での、世界政府機関の役割をね」
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この世界に来てから、約一週間たった。
陛下からはいろいろなことを教わったし、陛下が忙しいときにはグレルに教えてもらった。
「うーん、この世界はなんか空気がきれいだなぁ」
うーんと伸びると、箒をもって掃除をする。
今、私は城に住み込みのメイドとして働いている。陛下が「どこに住むつもり? 住むところなかったら、この城にいるといいよ。丁度、かわいいメイドさんが欲しかったんだ♪」と、私を雇ってくれたのだ。
この一週間で、分かった事がたくさんある。
その中でも、私に今必要なことは3つ。
1、ここは本当に魔法のある世界だということ
2、この世界には、私と同じような『転生者』がいるということ
そして、
「世界政府機関は、この世界でも、この世界を支配しているってこと」
私は手に思い切り力を入れる。
——バキッ
持っていた箒は中ほどで折れてしまう。
「当面の私の目標は『世界政府機関をぶっ壊す』ことよ」
ここにきて憶えた魔法のひとつ“キアノス(時属性の修復魔法)”できれいにそれを直すと
「待ってろよ、世界政府機関!! 絶対に、お前らを後悔させてやる。今までの、今までしてきたことを!!」
静かに、そう、宣言する。