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Re: 金色の魔女とオオカミ ( No.10 )
日時: 2015/09/28 20:39
名前: ぱすてる∞ (ID: Q.pGZPl6)

#4 救いの紳士

「…ァ"?あの小娘はどこ行きやがった」

「…ホントだ。いねぇ。クッソ、逃げられたか」

「それにしても、速くねーか?」

「オレらがこわすぎただけじゃねぇ?」

「ははッ、違いねー」

チンピラたちは、それぞれわたしへの恨みをぼそぼそと呟いている。やがてチンピラたちは諦めたようにその場から離れた。

わたしはそれを、上から見ていた。

「…ん、ありがとうございます」

助けてくれた人に、頭をぺこりとさげた。

「…こんの、バカッ!!…アホなのかてめぇは!?」

「ひゃんっっ!?」

助けてくれた人ーーすなわち、『あの人』に殴られた。痛い痛い。
できたたんこぶを擦りながら、「うぅ…」と唸る。


子猫、すなわちラユの言葉を信じ、ただじっとたちすくんでいると、なんとなんと『あの人』が現れたのだ。
突然の救いの紳士の登場で、わたしは必死に腕につかまりながら「助けてください!!」と懇願したところ、
彼は一瞬驚いた顔をして、あとから続いてきたチンピラたちの罵声をきき、納得したように頷いた。
それから、わたしの体を軽々しく持ち上げて、ふわりと隣の建物に飛び移る。
チンピラたちがきたのは、まさにその直後だった。危ない危ない。
そして状況は今にいたる。

「いっ、いきなり何!?痛いんですけど……!」

恩人に怒られて殴られる、かつてないシチュエーション。
突然のあまりに、反射的に涙がうかぶ。

「おまえは!オレが前助けたやつだろ?ーー学習しろよ!その服あやしいし、そんなの『カツアゲしてください!』って言ってるようなもんだろ!」

言われてみれば、たしかにそうだ。

「それに、二度も同じやつに捕まるとか、アホか!いや、アホだ!!」

い、言われてみれば、たしかにそうだ。

「ん、わ、分かったよ。脱ぐ!脱ぐから!だからその拳を引っ込めて!?」

わなわなと拳をふるわせる彼をなだめ、宣言通りにその黒いローブを脱いだ。
金色の髪が風にゆれた。

「…え、っと。改めまして、シュガーです。は、はじめまして。森の奥に住んでる、ただの娘。よろしく…です」

私を見るなり、彼は大きく目を見開いた。

「どうしたの?」

こわくなり、おそるおそる声をかける。
彼は、はっとした。


「…い、いや。なんでもない。オレは、ウルフ。オオカミだ」

「そう、よろしーー



「ごめん。オレ、君とはもう会いたくないかな」


「…ぇ?」

彼ーーウルフは、さきほどまでの怒りはどこへやら。
くるりときびすを返して、どんどんわたしから離れていく。

「…どういうことだ、姉貴」

と、呟いた声は、シュガーに届くことはなかった。

∞∞∞
9/28 修正しました。