コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 金色の魔女とオオカミ ( No.18 )
日時: 2015/10/12 21:25
名前: ぱすてる∞ (ID: Q.pGZPl6)

#8 愛を知った日

「…リ、リリー。まだかよ?こえーんだけど…」

目隠しをされ、手をひかれながら歩く。怖くなって当然だろう。
リリーはそんなウルフのことなんておかまいなしに、ある場所へと案内し続けた。

「えへへー。待ってね。ーーほら、いいよ!」

リリーの掛け声がすると同時に、目隠しをばっとはずされる。
眩しい光が瞼をやく。光に目がなれてきて、細めていた目をあけるとーー

「ぅ、わあぁ……!!」

思わず、感嘆の声が漏れた。

どこまでも続く花畑。
しゃらら、と音を辺りに響かせる川。
木は大きくしげり、太陽の光をあびて、爛々と輝いている。
小鳥やうさぎ、蝶などが思い思いの時間を堪能していた。

まさに、楽園だ。

「ど、どうしたんだよ……これっ!!」

興奮して、かすかに赤くなった顔をぱたぱたと仰ぎながら、この楽園を紹介してくれた少女に目をむける。
リリーは、手を後ろにやり、鼻を自慢げにならした。

「おねえちゃんがちょっと道に迷っちゃったときに見つけたのよ。木と、花畑と、川があったから、ちょっとお手入れしただけ。どう?気に入った?」

「あぁ、もう最高だ!人生で一番、幸せだよ」

そう言うとリリーは、幸せそうに笑った。

「なら。…なら、ここでおねえちゃんと暮らさない?小さなおうちを建てましょ。それで、ずっとずぅっと仲良く暮らすの。どう?」

今まで言えなかった内緒事のように、声をひそめてリリーは言う。
そんなことができたら、とても幸せなんだろうなぁと思う。でも、思うだけだ。

「……できるなら、そうしたい。オレだって、リリーと暮らしたいよ。でも、でもさ。現実的に考えて無理だろ。金とか、ないし」

「大丈夫よ。作ればいいじゃない。おねえちゃんと、ウルフで、二人だけのおうちと、楽園を。毎日がきっと楽しいわ」

ーーそんなの、無理だ。
そう、分かってはいるけど。でも、今まで苦しんできたのだから。
これくらい、夢をみたって、誰もウルフを責めることはないだろう。

ふっ、と肩の力が抜けた。
今までの苦労が、この少女にすべて救われてしまった。
もう、リリーがいないと、無理かもしれない。

「ーーうん」

ウルフは、その一言に今までの感謝を全ていれた。
間違いなく、『愛』を知った瞬間だった。

ーーだから。

「…やっと、見つけましたぞ。リリー姫」

ぱぁんっと銃声があがる。驚いた小鳥たちが飛び立ち、辺りに静寂がおとずれる。

「もう、あなたが姿を消して、何年目になるか。国王様も、とうとう諦めになった。ーーもともと、存在しなかった姫だ。今度見つけたら、処分するように、と申し付けられておりますゆえ」

黒いスーツをきた、シラナイダレカがシラナイコトをぺらぺらと語っている。
姫?国王?存在しなかった?
そんなことは、そんなことはどうでもいい。
彼女は、リリーは、オレの、たった一人のーーー。

「……っは、ぁ」

リリーがこちらに倒れこむ。慌てて伸ばした手のなかに、リリーはすっぽりとおさまった。

「り、りー…?」

ウルフの服が、赤色に染まっていく。

ーーなんだよ、コレ。

そんな質問を抱いている間にも、赤色のそれは止まらない。

「ーーご…めんね、ぅるふ」

「ぁ、あ、りりー?りりー、りりー!?」

「おねえちゃんね、隠し事、ぁったんだあ。…でも、ねウルフに嫌われるのがすご、いこわかったの」

喋る度に、口から赤い液体が流れ出す。
どんどん、どんどんリリーの体は軽くなる。

「もう、いいよっ!喋るなよ!!」

「…ごめんね、ごめんね。わたしがーー守るって、約束。やぶっちゃう」

「いいよ、それより、オレの側にいてよ…っ、いなくならないで、リリー…………ねぇちゃんっ」

オレが初めて呼んだ、ねぇちゃんという言葉。
ずっとずっと、言えなかった。
もう、ずいぶんまえから気づいてたのに。

リリーは、かすかに頬をゆるめた。

「…ぁぃしてる。ずっとずっと、大好きよ。……愛してる、ウルフ」

唇を震わせて、リリーはそう言った。
それが、最後だった。

▲▽▲▽▲▽
コメントがほしいですん。(;_;)