コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 金色の魔女とオオカミ ( No.26 )
- 日時: 2015/10/17 21:20
- 名前: ぱすてる∞ (ID: Q.pGZPl6)
#10 partner
「…ふむふむ。困ったね」
ラユがひげを指で弾いてからそう呟いた。
「困っちゃうようなことが書いてあるの?…それ」
シュガーが指を指したのは国王からの手紙だ。
「んー。なんていうかねぇ。かくかくしかじか……
ってなわけ」
「ふぅん。え、わたし大丈夫なの?このままじゃ下魔術師どころか闇魔術師になる勢いな気がする…」
シュガーは、魔法が使えない。
本人にもラユにも、その理由が分からないのだが、『金色の魔女』で、人々からこわがられてしまうため、むしろそれは良かったというべきだろう。
「それに、パートナー。わたしなんかと、組みたい人、いないだろうなあ」
「…ん、そこらへんは大丈夫かなぁ。ーーあの少年がいる」
目をキラリと光らせて喋る子猫の姿は、うん、怪しい。
町中で見かけたら即保健所といったところだろうか。
「…ううん、じゃなくて!あの少年って、ウルフ?…でも、ウルフは」
『もう、君とは会いたくないかな』
記憶がフラッシュバックする。
そう、そうだった。
あのとき、ウルフはーー
「会いたくないって、言ったよ」
俯いて、言葉をしぼりだす。
「だーいじょうぶ。……だって、あの子だって、きっとシュガーが気になってる。
それに、うちにこの手紙がきたってことは、ウルフにだって届いてる。パートナー、探してると思うよ」
「……わたしがいたら、迷惑がかかるもの。きっと、いろんな事件に巻き込んじゃう」
「そのときのための、ボクなんだよ。でもさ、守ってくれる人が二人いても、別にいいんじゃないかな?」
「…………」
「ね、シュガー。ずっと、待ってるつもり?」
「…ぃや」
「…!」
「今度は、わたしから。ウルフを、みつける。嫌われたなら、ちゃんと理由を聞かなくちゃ。だよね、ラユ」
「ーーさすが、ボクの自慢の子」
∞∞∞
『ウルフ、起きて!おねえちゃん、アップルパイ作ってきたのよ!』
ーーねえちゃん。
『おねえちゃん、ウルフが大好きだよ。自慢の弟』
ーーねえちゃん、ねえちゃんねえちゃん!
『ごめんね、守るって約束、破っちゃう』
ーー…ねえちゃん。嫌だよ、行かないで。
「…オレを…、一人に、しないで」
遠くなっていくリリーの姿に手を伸ばす。
腕のなかで消えていく、命。
大好きで、世界で一番だった、姉の姿。
ーーねえちゃんの代わりに、オレが死ねばよかったのに。
「……フ?ウルフ??」
ぼやけていた視界がいっきにさめ、意識が覚醒する。
目の前にいたのは、あの懐かしい金色の髪と桃色の瞳の少女でーー。
「ねえ、ちゃん?」
「な、何言ってるの。わたし、シュガーだよ!」
聞こえた声に目をこする。
改めてみると、なるほど、姉の姿によく似た密編みの少女だ。
って、ええぇ!?
「いや、おまえなんだよ!どっから入った!?」
「ラユがね、魔法でいれてくれたのよ」
当然のように言うが、不法侵入だ。訴えてやる。
そう言いたいところだが、面倒なのでぐっと我慢する。
「で、何のようだよ。もう、二度と合うつもりはなかったんだが」
「うん、あのね。わたしの、パートナーになってほしいの」
こちらが言った皮肉にも気づく素振りすらなく、どこまで天然なのかと思わせる。
「…って、おい。なんつった?」
「うん、あのね。わたしの、パートナーになってほしいの」
一語一句間違えずに、シュガーは言葉をくりかえす。
故に、言うことまで、リリーと同じなのかと頭を抱える結果となった。