コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 金色の魔女とオオカミ ( No.28 )
- 日時: 2015/10/21 20:32
- 名前: ぱすてる∞ (ID: Q.pGZPl6)
#11 思い出を代償に。
ウルフside
ーーなんだなんだ、なんなんだよ。
姉のリリーとそっくりな姿のシュガー。
そいつは、似ているのは顔だけでなく、性格もだった。
リリーは、オレを家族に。
そしてシュガーは、オレに「パートナーになろう」と懇願している。
パートナーというのは、今度行われる魔法試験においてのペアということだ。
「なんで、オレなんだよ……」
何故、二人ともオレを選んだんだ。
リリーは優しく、オレにもたくさんの愛をくれた。
でも、オレのせいで、死んだ。
オレが、守れなかったせいで。
オレが、戦えなかったせいで。
オレが、弱かったせいで。
「…なんで、オレを選んだんだ。どうして、オレを生かしたんだ。どうして、リリーが死んでしまったんだよ」
視界が白く染まる。
頭の中で、大きな鐘ガンガンと鳴っているのが聞こえる。
ああ、うるさい。
何もかも、聞こえなくなってしまえ。
何もかも、消えてしまえ。
何もかも、何もかも、何もかもーーーーー
「…ウルフ…!」
泣きそうな声だ。
おそらく、シュガーのものだろうが、もう、どうでもいいや。
ぷつり。
∞∞∞
「…っ!!ラユ、ウルフが!すごい熱なの、助けて!」
ぶつぶつとウルフは呟いて、倒れてしまった。
驚き、ウルフにふれ、また驚く。体が、熱いのだ。湯気がでそうなほど、熱い。
シュガーはどうすることもできず、いつものようにラユに頼ってしまう。
「ホントだ。すごいねー。でも、大丈夫。お薬飲んで、よく寝たらきっと良くなるよ。魔法は体にあんましよくないから、少しだけにしておこう」
「…よかった。魔法、体によくないの?」
「まあね。ボクが治癒系のやつは苦手だからなのと、やっぱり、自分以外のモノが体内を流れるってことだから、すごく疲れるんだよね。まあ、腕のいい人がしたらそんなことは全然ないんだけど」
といい、ラユは舌をぺろりとだして苦笑い。
とはいえ、ラユの力はかなり強い。
すぐ治るはずだ。
「じゃあ、ラユが治療してるあいだ、わたしはおかゆ作ってくるから」
「…え?シュガーが?いいよ、ボクが作るよ!」
「そんなあわてなくてもいいのに!」
子猫の反応に頬をふくらましながらも、やっぱり料理の腕に自信はないので椅子にすわっておく。
ラユとシュガー。おたがい沈黙が続く。
「…ウルフ、昔なにかあったのかな」
とうとう耐えかねたシュガーが口をひらいた。
「ん、だろうね。ウルフの血って、オオカミじゃないから」
「え?でも、オオカミなんじゃ…?」
「うん。オオカミだよ。つまりは、オオカミだった誰かに、その力をもらった、ってこと。
でも、オオカミの力をもらうのには色々条件があってね。
まず、親しい人じゃないといけない。それに、オオカミの力を移り渡すには、そのオオカミが死ぬ、と本能で感じたときにしか渡せないんだ」
そこから導かれる答えはーー。
「つまり、親しいオオカミさんが、死んじゃったってうことです」
「…….そう」
シュガーはそう言うと、寝たままのウルフ近づくと、その頬をそっとなでた。
「ウルフ。強く、生きてね」
そう口のだけで呟いた言葉は、ラユの耳には届かなかった。