コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 金色の魔女とオオカミ ( No.33 )
- 日時: 2015/10/27 20:20
- 名前: ぱすてる∞ (ID: Q.pGZPl6)
#15 リリーの恋、そして終わり
それから、二人はよく出会った。
ハスの話によると、今度ララと結婚するそうだ。
この国の国王、つまりリリーの父親キースが決めたのだそうだ。
まぁ、ララからの頼みなのは目に見えているけれど。
「自分のことは、自分で決めたかったな。父上とキース国王が二人で勝手に決めてしまったんだ。ひどいとは思わないかい?」
「…とても、思うわ。でも、王子として生まれてしまった以上、そうなることはしょうがないのかもしれない」
「はは、期待通りの答えだよ。…さて、と」
ちなみに今の二人はカーテン越しに話している形で、お互いの姿はまだ知らない。
「今日こそは、君のとなりに座れるかな?」
もはや、ききなれた言葉だ。
そして、今日もお決まりの言葉を口にする、はずだった。
「…ダメよ。それが、あなたのためだから。わたしがあなたのそばにいたら、あなたが危険なの」
今まで、ずっと言えなかった言葉だ。
カーテン越しに、ハスが首をかしげるのがわかった。
「どうしてだ?ーー僕は、君のことが好きなのに」
「…ーー!?」
そんなことを言われたのは、初めてだった。
今まで、ずっとずっと嫌われてきて、愛をもらったことなんてなかった。
「本当に?わたしを、こんなわたしを、好きになってくれるの?」
「あぁ。君がいいんだ。外見なんて関係ない。君のことが、好きなんだ、リリー」
涙があふれる。嗚咽を必死でこらえ、溢れる涙をぬぐると、
シャッ
音をたてて、カーテンが開かれた。
目の前には、栗色の髪をした青年、ハスがいる。
突然のことに驚き、髪と瞳を隠すようにしゃがみこんだ。
「やだ、見ないで!!これで、あなたもわたしを嫌いになったでしょう!?」
これで、もう終わりだ。この姿を見れば、彼も幻滅ををするにちがいない。そう、思ったのに。
「…何いってるんだよ、リリー。すごく綺麗な金色じゃないか」
「…ぇ、ぁ?…金色の魔女、だよ?」
「違う。リリーは、魔女なんかじゃない。僕が好きになった女の子は、綺麗で、素直で、優しい。魔女なんかじゃないよ」
「ぁ…、ぅ、あ、あ」
じわりじわり、と暖かい気持ちが心を満たして。
拭ったはずの涙はまた溢れてきて。
「ぁりがとう、ハス。わたしも、あなたがーー」
好きよ、と伝えようとした、そのときだった。
部屋のドアをあけ、入ってきたのは、ララでーー。
「ねぇ、ハリス王子。結婚式は、いつにすーーーー、リリー?」
「……っ」
リリーに気づいたララがその甘い空気を察する。
普段は可愛らしい顔のララの顔が、怒りに染まった。
そして、ツカツカと靴の音を鳴らしながら、リリーへと近づき、
ばしっ
乾いた音が部屋に響いた。
「何をするんだ、ララ王女!」
ハスはリリーを守るように抱き、ララをつよく睨み付ける。
ララはそんな視線を無視して、荒く息をはきながら、平手打ちをリリーの顔にぶつける。
「…っ!!…ぁうっ!」
情けないリリーの声をきいても、ララの怒りはおさまらない。
「この!!汚れた、魔女め!!魔女の分際で!!、人のモノをとるなっっっ!!」
ばしっばしっ
リリーは何も言わず、黙ってそれをうけるだけだ。
ただ、今までにないほどの怒りをこめて、ララを睨み付けている。
「ララ王女、もう止めろ。これ以上、この人を傷つけるなら、僕も黙ってない」
「…!」
「はっ!?ハリス王子、あんたはこの魔女の味方ってわけ?」
りりーを殴るのをやめ、きっとハスを睨み付ける。
「あぁ、そうだ。君のような人と、結婚をしたくないな。婚約は破棄だ」
そう告げられたララの顔の豹変ぶりは、すさまじいものだった。
一気に顔が青白くなり、ハスにすがりつく。
「待って!今のは、謝るわ。謝ります。ごめんなさい。だから、だからわたしを見捨てないで!!」
涙をぽろぽろ流しながら、ララはハスの洋服にしがみついた。
ハスのきれいだった服が、ララの涙やら鼻水やらで汚れていく。
「服が、汚れてしまったな。もう、いいよララ王女」
その言葉に、ララは顔をあげる。
「婚約は、破棄だ」
「……っ、分かったわ。そこまで言うのなら、婚約を破棄する」
苦しげに言葉を絞りだし、震えた声でそういった。
その姿には、さすがのリリーも、ハスも、心がいたんだ。
だが、それも次の言葉までだ。
「そのかわり、あなたたち二人を、刑でくだす」