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Re: 金色の魔女とオオカミ ( No.39 )
日時: 2015/11/08 18:15
名前: ぱすてる∞ (ID: Q.pGZPl6)

#18 最後の微笑み

「ーーどうしようかなぁ」

リリーは、泣きつかれた目を擦り、重たい足どりで森の中を歩く。
もちろん、目的場所などないが、今のリリーにはそれしかなかった。

もう追っ手もこなくなった。
走ることはせず、夢と現実の間をただよいながら、歩く。ーー歩き続けた。

▽▲▽

「……?」

歩き続けて、どのくらい時間がたっただろう。
足は、葉で切れ血が出ている。
疲労も、すでに限界をこえている。

ハスと別れたときは暗かったのに、今は明るいから、まぁ当然なのかもしれないけれど。

終わりのないような森を歩き続け、リリーは変化をみつけた。
足だ。人間の足で、痩せ細っている。

素早く木の影に隠れ、様子を伺う。

少年だった。
赤茶色の髪に琥珀色の瞳をもつ、小さなオオカミのような少年だった。

「オレが死んだら、誰か気づいてくれるかな」

ぽつり、と聞こえた声。
この子は、わたしと同じだ。そう、思った。

急いでポケットの中をまさぐる。
でてきたのは、クッキーだけ。近くの川で水をくみ、少年の顔にぶちまけた。

そこからは、早かった。

少年の家族になった。
この子を、ほおっておいてはいけない、と本能が感じとったのか、気がつけばそう言っていた。

後悔は、していない。

あのとき、ハスに貰った愛を、この子にささごう。
この子を守り、幸せに連れていってあげよう。

そう思ったのは事実だ。

会ったばかりの見ず知らずの子に、どうしてそこまでできたのか分からない。
リリーも、家族がほしかったのだろう。

▽▲▽▲

しばらくの月日がたち、リリーは王の手によって死んだ。
あるいは、ララの手かもしれないけれど。

でも、死ぬ直前まで、そんな奴等のことなど考えていなかった。

考えていたのは、愛しい二人のこと。

やっとハスに会えるという期待と、もうウルフを守ってあげられないという絶望感。
矛盾した気持ちを胸にかかえながら、リリーは死んだ。

最後の直前にみえたのは、今にも泣き出しそうなウルフの顔。

ほら、男の子なんだし、そんな顔しないで?
おねえちゃん、ウルフは笑ってる方が似合うと思うの。

そう言うことすらできなかった。
だから、せめて微笑んで。

今までありがとう。愛してるよ。