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Re: 金色の魔女とオオカミ ( No.40 )
日時: 2015/11/08 20:43
名前: ぱすてる∞ (ID: Q.pGZPl6)

#19 根拠のない安心感

ふわり、とそんな感覚で、涙が頬を濡らすのがわかった。
リリーだ。リリーが、ウルフに教えてくれたのだ。
彼女が、どれだけ自分を愛してくれていたのか。

でも、ひとつだけ不可解なことがある。

リリーは、自分に『復讐して?』と懇願してきた。
あの、心優しく可憐な姉が、あんなことを言うはずがない。

あれは、本当に姉だったのだろうかーー。

「……ーーぁ」

そこまで考えて、ウルフは辺りの様子に気付いた。
空は茜色に染まっており、夕方なのを知らせていた。

ずいぶん長いこと眠っていたらしい。

「こいつは……シュガー…だっけ」

床に膝をつき、ベッドに体を預けているリリーと瓜二つの少女、シュガーだ。
ずっと、ウルフを看病してくれたのであろう。

「あ、起きた?」

そう、お盆に水をのせてやって来たのは、猫だった。
ふわふわと浮きながら、こちらを見据えている。

そういえば、よくシュガーの側にいたような…。

「…だめだ、思い出せねぇ。おまえ、こいつの側によくいた猫だよな?」

「うん、そうだよ。ボクの名前はラユ。この子の親代わりみたいな猫なんだ 」

そういって、ラユーーと名乗った猫はシュガーをいとおしげに見つめた。

「この子、ずっとキミを看病してたから、ちょっと疲れてるみたいなんだ。寝かしておいてくれる?」

「ああ、かまわねーー

「ん…、ぁ、れ?ここって…。うぅん、違う、ウルフだ!」

意味不明な言葉を叫び、シュガーは文字通り、飛び起きた。

「あれ、ウルフ!起きたんだね、よかったあ」

そう言って胸を撫で下ろすシュガー。
その顔は本当にリリーと似ていて、また泣きそうにーー。

「ウルフ?」

「え、あれ。どうしたんだろ…」

ぽろぽろと涙があふれでる。
なにも、悲しいことなどなかったはずなのに。

必死に止めようとすればするほど、涙はあふれて止まらない。もう、訳が分からなくなっていた。

すると、

「よしよし、大丈夫、大丈夫。ひとりじゃないよ」

シュガーが、ウルフの肩をだき、優しく、優しく頭をなでていた。
語りかけるように告げる言葉には、なんの根拠もないし、安心なんてできない。できないはずなのに、ウルフは固まった心が溶けていくのが分かった。
それにともない、涙も除徐にとまっていく。

「…なさけ、ねぇ。この年で、女に頭なでられるとか…」

「大丈夫だよ。泣いたら、強くなれるんだから」

シュガーの言葉には、根拠がない。
だから、安心できるのかもしれない。

現に、ウルフはそうして泣き止んだのだから。