コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 金色の魔女とオオカミ ( No.57 )
- 日時: 2015/12/04 18:57
- 名前: ぱすてる∞ (ID: Q.pGZPl6)
少しお久しぶりです。
◇◇◇
#25 試験説明とラユの心配事
「ーーええ、では、続いて国王様から試験の内容についてをご説明してもらいます。心してきくように」
イリマール国の大臣、アムトラフがそう告げると、それまで眠そうにしていた人々ーー試験受験者達が顔をひきしめる。
せめて、中級魔術師になることを目標とした者。
賞品を狙って光魔術師を目指す者。
自分の力を試すために試験に出場する者。
純粋に、無事に試験を終える事を望む者。
シュガーは最後の者だった。
故に、試験説明などはどうでもよく、「ふわぁ〜」とあくびをしていた。
その隣で、そんなシュガーを横目に睨みながら説明に耳を傾ける少年、ウルフ。
そんな二人を不安そうに見守るラユ。
シュガーとウルフには、『信頼』が足りていない。
その事が原因でラユに心配をかけていることにも、二人は気づけない。
『試験』に対して、これ以上にないほど不安定な状況だと思えた。
そんな二人を見つめながら、回りの敵たちは『論外』と札をつけていることにも気づかずに。
話を国王に戻すと、
「今回の試験では、二つのことを受けてもらう。一つは『力』もう一つは『心』じゃ。
『力』では、この場にいる試験受験者にAグループ、Bグループ、Cグループに別れて戦ってもらう。
戦い方は自由じゃ。剣、魔法、拳…。思う存分に暴れるがよい」
その言葉をきいてか、微かに歓喜の声がするのが聞こえた。
それには能天気なシュガーも、少し怯えてしまった。
「ただし!」
ざわつく会場をたしなめるように、威厳にみちた声が会場全員にいる者の鼓膜を震わせる。
「ただし、『力』の試験は、『心』の試験を突破出来たものにしか受ける権利をあたえない。
『心』の試験は、それぞれの心に足りないものを思い出させる、そんな試験じゃ。ちょいと難しいから、三回まで挑戦できることにした。
『心』の試験を突破でくなかった者は、その時点でさようなら、じゃな。
まあ、可哀想じゃから、試験権利の剥奪まではしない。また来年挑戦しなさい」
試験の内容に、シュガーが、ウルフが、その場にいる受験者が息を飲む。
力よりも心の方が面倒くさい。それを感じ取ったらしい。
そんな反応を楽しむように、国王キースは笑みを浮かべ、
「最後にひとつ、アドバイスをやろう。
バートナーを作らせたのは、何故なのか、それをよく考えて試験を行え。
自分を失うな。自分をこわがるな。自分を優先するのではなく、他人の事に気を使え。仲間をたより、信頼を築き上げろ。
ーーそれを心に刻めば、試験なんてへっちゃらに解ける」
よく分からない言葉を残した国王は、満足したような顔で部屋の奥へと消えていった。
それを見届けたあと、ラユは小さく吐息を漏らし、シュガーにも聞こえない声で、
「…相性が悪すぎるよなあ」
と呟いた。