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Re: 金色の魔女とオオカミ ( No.58 )
日時: 2015/11/29 20:16
名前: ぱすてる∞ (ID: Q.pGZPl6)

#26 試験前日の夜

指定された部屋に戻った二人と一匹は、長旅だったこともあり、疲れていた。
眠たいのに、眠れない。
そんな状況に二人とも陥っていた。ラユだけはぐっすりだが。

「ねぇ、ウルフ?」

沈黙に耐えかねて、シュガーが口を開いた。

「ん?眠れねぇのか?オレもだけど」

「そう。ーー大丈夫、だよね」

珍しく不安そうなシュガーに、内心で驚きつつ、優しく笑ってウルフは応える。

「大丈夫さ。試験なんて、楽勝楽勝」

そう言いながら、おどけてみせるウルフに、鈍感なシュガーにもその優しさは分かった。

「ーーありがとう、ウルフ。ごめんね」

三つ編みにしていたはずの髪が、寝る前はふわふわとなだらかなウエーブをかいた髪に変わっている。
その金色の髪をゆらして、謝罪してくるシュガー。
その謝罪の意図がわからず、ウルフは首を傾ける。

「本当なら、ウルフはわたしじゃなくても良かったのになぁって。
無理矢理、わたしを選ばせちゃったから。他の人より、ハンデだし」

髪をいじりながら上目使いでこちらを見つめるシュガーに、ウルフはどうしようもない感覚に刈られた。

怒りがわき、キッと目の前の少女を睨み付ける。

「そんなこと!そんなこと、思ってねぇよ!お前こそ、オレで良かったのかよ?」

怒りに感情をまかせてしまっていたせいか、本音が漏れてしまう。
シュガーはその言葉に驚き、目を見開いた。

「わたしはね、願ってたの」

ソファで丸くなるラユの側にいき、その背中を優しく撫でる。
その手つきには信頼と愛情があふれており、最愛の家族だということがわかった。

「わたしは、金色の魔女と容姿が同じ。だから、わたしを嫌う人はこの世界にごまんといる。
わたしと一緒にいてくれる人なんて、ラユくらいしかいないの。
でも、わたしを助けてくれたあなたならーーって願ってた」

はにかむように笑うシュガーを目の前に、ウルフはもやもやする感情を覚えて、胸のあたりをさする。

「ふわぁ、喋ってたら眠たくなってきちゃった。もう、寝るね」

そう言ってソファから立ち上がり、ドアへむかう。
そして、ドアを開ける直前、こちらをふりかえり、

「ありがと、ウルフ。あなたで、良かった」

秘密ごとをするかのように笑い、最後に「おやすみー」と残してドアを閉めた。

そんなシュガーを見送り、ウルフは複雑な感情をいだいたまま、重い足取りでベッドに向かった。