コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 金色の魔女とオオカミ ( No.62 )
日時: 2015/12/03 20:47
名前: ぱすてる∞ (ID: Q.pGZPl6)

#29 『心』の試験、受験者シュガー part2

赤い花が、目の前に散った。

「ぐ、ぐおぉっ!?」

斬られた腕を押さえながら、苦しげにのたうち回る黒い人。
無惨で、残酷で、恐ろしい光景だった。

怯えて瞳に涙を浮かばせるシュガーの頭に、ふと暖かいものが置かれるのがわかる。

「シュガー、大丈夫だから。少しだけ、お目めをぎゅってしててくれるかな?」

優しげに笑う母、ラフィーはその顔を赤色に染めている。
その手に長い剣を持っている事に気づき、ようやく、母が彼を斬ったのだと理解できた。
これから何が起きるのかも。それをみてはいけない理由も。

幼いながらに分かってしまったから。

「お母様…」

震えた声で呟いて、固く目をつぶった。

「いい子ね」

それが聞こえたのが最後。
男達の絶叫で埋めつくされていった。

◇◇◇

「ーーぁ」

掠れた声をもらし、試験が終わったことに気づいた。

白い空間に戻っている。
さっきまで赤い炎と黒い人を見ていたせいか、目の前がチカチカと点滅して、気分が悪かった。

鼓動が早いのは、きっとシュガー自身の問題なのだろうけど。

「あー、おつ、シュガー」

横にフーラが寝転がっていた。

「わたし……」

あれは、昔の記憶だった。
ずいぶんと古い記憶で、もう忘れかけていたような、そんな記憶。

「本当はもっと見させるつもりだったんだ」

口を尖らせながらぼそぼそという姿によると、拗ねているらしい。

「でも、呪いがかかっていた」

「ーーどういう意味?」

意味不振な言葉に、温厚なシュガーも顔をしかめる。

「その事を思い出させないように、呪いがかかってたんだよ。誰がやったのかは分かんないけどねー」

「のろ、ぃーー?」

「そ。呪い。まぁ、その事はいいんだよ。あたいに関係ないからさぁ」

「そ、そんな言い方…!」

思わず立ち上がり激怒すると、寝転がっていたフーラも立ち上がり、

「それよりも大事なお知らせがあるって意味だから!…試験結果。ききたくないの?」

ごくり、と喉を鳴らしたシュガーをみて、不敵に笑ったあと、

「ま、とーぜん不合格だね」

手をあげて、首をふっているフーラの姿に、分かってはいたが、それでも失望を隠せない。自分自身への、失望を。

「ーーそう、だよね。うん、ごめんなさい」

「すぐに謝れるのは良いことだよね。じゃ、採点結果ね。ーーシュガーは、全く自分に向き合えてない。自分で自分がこわいんだよ」

「ん、もっと分かりやすくお願いします」

「次の試験までの宿題ね。その意味をちゃんと理解して試験に望むこと。んーと、じゃあ試験は終わり。良い一日を」

そう言って、はじめて少女らしい笑みを浮かべ、もっていたナイフでシュガーをーー。

◇◇◇

「ーーっ!?」

思わぬ展開に、シュガーは飛び起きた。

まず身の安全を確認し、一安心したあと、

「ここはーー。試験の扉?」

元に戻ったことを確認した。
そして、試験に不合格だったことと、隣にウルフもいたこと。

一通り確認し終わったあと、深い深いため息をついた。