コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 金色の魔女とオオカミ ( No.68 )
- 日時: 2015/12/12 20:48
- 名前: ぱすてる∞ (ID: Q.pGZPl6)
#32 ふほーしんにゅーしゃ
『ねぇ、シュガー。お願い、これだけは必ず覚えておいて』
『ーー』
『母様は、シュガーを愛してる。大好き、大好きよシュガー』
『ーーき』
『いつまでも、ずっと、この世界で一番大好き』
『ーーつき』
『あなたがなんと言われようと、シュガーは母様の宝物よ』
『ーーそつき』
『辛くて、泣きそうになったときは泣いて良いの。それで、母様と過ごした日々を思い出して』
『ーーうそつき』
『悪魔って言われても、魔女だって言われても、それは違う。だってあなたは人間だもの。私の、天使だから』
『ーーうそつき、うそつき、うそつきぃ』
『嘘じゃないわ、シュガー。母様の目をみて?』
『ーーそうやって、わたしを、おいていくんでしょ……?』
『ううん、違う。母様とシュガーはいつでもいっしょ。ずっととなりにいるわ』
『ーーうそ、つき』
『じゃあ、約束しましょう。ずっとずっと、いっしょ』
『ーーほんとに?』
『ええ、本当。愛してるシュガー。わたしの天使』
『ーーあ』
◇◇◇
頬を、涙が濡らす感覚があった。
それに気づき、むくりと体を起こして涙を拭う。
辺りは太陽の光に包まれ、小鳥が木の上で鳴いている。
気持ちの良い朝だ。
「んー」
伸びをして部屋を見回す。
見慣れない部屋。試験のために貸されたホテルみたいなところだ。
くんくんと良い匂いをかぎとり、ベッドから降りてラユの姿を探す。
「ーーあ、おはよ、シュガー」
そう言っていつも通りに声をかけてくるラユがーーいなかった。
変わりにいたのは、
「ウルフ!?」
エプロンをつけたウルフが、形の良いオムレツをひっくり返すところだった。
「お、起きたか。まあ、とりあえずおはよう」
「お、おはようだけど…。ラユは?ウルフが、どうしてここに…?」
ウルフは出来上がったオムレツを皿に移し、目線を泳がせながら頬をかいた。
「オレ、反省したんだよ。ごめん、悪かった」
「…!?そりゃあ、うん。許してあげる、けど…」
曖昧な返事をしながら、シュガーは目の前にいる少年の存在を認めることができない。
だって、昨日は確かに鍵をかけたはず。それに、誰か入ってきたならラユが気付くはずでーー。
「ラ、ラユは…?何処に行っちゃったの…?」
「ラユ…?ラユって…。いや、なんでもない。ラユはーー。ラユは、風呂にいった」
ラユがお風呂に入るわけない。だって、ラユは猫だもん。
そこまで言おうとして、思わず口をつぐんだ。
やはり、目の前の少年はウルフの格好をした誰かなのだ。
「そう。分かった。オムレツ作ってくれたの?お腹すいたし、朝ごはんにしよっか」
そういって笑い、心のなかでひそかに作戦会議。
これから、このよく分からない人と闘わないとならないのだから。