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Re: 金色の魔女とオオカミ ( No.77 )
日時: 2016/01/04 20:44
名前: ぱすてる∞ (ID: Q.pGZPl6)

39#復讐or信頼

今度の世界は、前の白い空間とは対照的に、暗闇の空間だった。

「ーーー。ーー?」

声が、でなかった。
一瞬驚きつつ、受け入れる。これは試験なのだから。試験のみせる幻影なのだから。

「ーー!」

遠い場所に、微かな光がともる。
小さく弱々しい光だが、この暗い空間では十分すぎるほどに目立っていた。
その光は、規則正しく上下に揺られながらこちらに近づいてくる。
どうやら人、のようだ。

「ーー」

ようやくその人物の顔が伺えるようになり、目をこらしてその人物を見つめる。

「ーーっ」

金色の髪と桃色の瞳。微笑に唇をほころばせている。
やっぱり、といった感想。

試験はどうやら自分の心に弱い部分をついてくるらしい。
それは鬼のようなルールだがーー。その裏には、やはり『自分に足りないものが見つけられる』という優しさがこめられている。
なるほど。あの国王が言っていた通りだ。

その事に気づき、驚き、それに気づくことのできた自分の心境の変化にも驚く。かつての自分なら、そんなことになんて気づけなかっただろう。

話をもとに戻すとーー。

「ウルフ、はいこれ」

「ーー。?」

リリーから手渡されたそれ。リリーのもつ灯りにてらされて見ると、剣だった。
意味がわからず、眉をひそめると、

「それ、しっかりにぎって。ほら、あれがみえる?」

と、ウルフの剣をにぎっている手に、上からおいかぶせるように両手を重ねて、ぎゅっと握らせた。
リリーの視線のさきを目でおうと、そこには嫌な記憶を刺激させる人物、リリーを殺したあの黒い男たちがいた。

「あれは、お姉ちゃんを殺した人達。わかるわよね。その剣で、一回心臓をつらぬけばあら不思議。その人達はこの世界から消えちゃうのよ」

面白いでしょ、とでも言いたげな表情だが、実際は超こわい。
しかも、その言葉で手がうずいてしまった。

試験とはいえ幻影だ。
今回は『復讐して』だなんて言われたわけでもない。
別に、この世界で殺してしまっても関係ないのではないだろうか。

そう考えていると、また暗い世界に光がともる。

「ーー」

急いでそちらを向けば、そこには姉と瓜二つの少女、シュガーがいた。

様子が変だ。
手を後ろでしばっていてーー否、縛られていて。
瞳には現実ではみたことのないシュガーの涙が大粒にたまっていた。

「ーー!?」

それではまるで、誰かに殺されかけているようではないか。

「…!!!ウルフ、こっちにきちゃ、だめぇっ…!!」

心配して駆け寄ろうとすると、ウルフの存在にきづいたシュガーが金切り声をあげた。
みたこともない彼女の表情に、驚いてその足をとめた。

すると、次の瞬間、黒いローブで全身を隠した謎の男が音もなくあらわれた。
その手には巨大なかまを持っている。
その男はかまをシュガーの首めがけて勢いよくふりあげーー。

「ーー!!」

焦って止めた足をまた走らせようとするとーー。

「ウルフ、どこいくの?」

ウルフの服の裾をつかみ、リリーが悲しそうにこちらを見つめた。

「あそこにいるんだよ?もう少し、なのに」

リリーをみる。悲しそうな瞳。揺れる金髪。
シュガーをみる。必死で潤んでいる瞳。激しく上下する肩。

状況をよむ。つまりこういうことだ。

ーーあなたは、復讐を選んで自分を罪から解放させますか?
ーーそれとも、信頼を選んで少女を救い、絆を積み上げますか?